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2008年10月14日(火) 14時00分

「胚分裂、最初の24時間」動画:個々の細胞の動きを初めて把握WIRED VISION

Video: 欧州分子生物学研究所

ドイツのハイデルベルクにある欧州分子生物学研究所(EMBL)の研究チームが、[脊椎動物の]胚が発生する最初の24時間の様子を、個々の細胞レベルで初めて完全にとらえることに成功した。

研究チームが用いた新開発の顕微鏡は、薄い光の膜を使って生体をさまざまな方向からスキャンするというもので、これによって、ゼブラフィッシュの胚が、1つの細胞から2万個の細胞に分裂するまでの、複雑な細胞構成を追跡することが可能となった。

「宇宙に望遠鏡を設置して、ある町の住人たちの様子を24時間追跡すると想像してみてほしい」と、EMBLのPhilipp Keller氏はプレスリリースの中で述べている。「脊椎動物の胚を構成する1万個の細胞を追跡することはそれに近い」

「今回の胚のデジタル画像は、いわば『Google Earth』の胚発生バージョンだ。最初の24時間に起こるすべてのことを概観しつつ、すべての細胞、さらには細胞内の詳細に迫ることができる」と、ハイデルベルク大学のJochen Wittbrodt氏はプレスリリースの中で述べている。

人間の胚は3日経っても細胞が8つにしか増えないが、ゼブラフィッシュの胚ははるかに成長スピードが速い。

これまでに研究者が成功したのは、線虫など、細胞が数百個しかない少数の無脊椎動物の発生から数時間の様子を断片的に観察することくらいで、それでもノーベル賞を授与されるほど画期的な業績だった[ジョン・E・サルストン氏は、線虫の受精卵が成体になるまでの過程で、細胞がどのように分裂・分化していくかを、顕微鏡で観察して記述した「細胞系譜」を完成させ、「プログラム細胞死」という現象を見つけたことで2002年度ノーベル医学生理学賞を受賞]。

しかし、脊椎動物で同じことを行なうのは基本的に不可能とされていた。

上の動画は、10分間隔で撮影した3次元画像をつなぎ合わせたもの。細胞が分裂し、胚の周りを動いて体の各組織を形成していく様子を、2つの異なる角度から捉えている。

今回の研究成果は、10月9日(米国時間)に『Science』誌オンライン版に掲載された。

『Digital Scanned Laser Light-Sheet Fluorescence Microscopy(DSLM)』と呼ばれるこの新しい顕微鏡技術は、マウスやニワトリ、カエルなど他の生物にも応用可能で、進化に対する理解を細胞レベルで深めるのに役立つと考えられている。[基礎生物学研究所サイトには、DSLMについての詳しい説明がある]

すでに今回の研究から、心臓の発生の初期段階は、これまで研究者たちが考えていたのとは異なることが明らかになっている。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081014-00000003-wvn-sci