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2008年10月13日(月) 08時01分

三浦元社長自殺 高まるロス市警批判 疑念と無念 交錯産経新聞

 □弁護士「独立した調査必要」

 ロス疑惑銃撃事件で米自治領サイパンで逮捕され、米ロサンゼルスに移送後、勾留(こうりゅう)中に自殺した三浦和義元会社社長(61)(日本で無罪確定)。12日、事件で殺害された三浦元社長の妻、一美さん=当時(28)=の母はコメントを発表し、真相究明に至らなかったことに無念さをにじませた。また、三浦元社長の親族は「自殺」に疑問を投げかけた。自殺を防げなかったロス市警への批判も高まっており、「三浦元社長自殺」の波紋は広がり続けている。

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 【ロサンゼルス=松尾理也】三浦和義元社長の自殺を受け、ロス市警は、本部長直轄で自殺の経緯について捜査を行うことを明らかにした。

 市警によると、元社長は市警本部内の留置場の独房に収容されていた。

 10日午後9時45分ごろ、通りかかった係官が、意識を失って倒れている元社長を発見した。30分ごとに監視を行うことになっていたが、発見されたのは巡回のわずか10分後だった。

 市警は自殺の懸念はないとみて、常時監視の施設には収容しなかった。

 自殺に関する捜査は、銃撃事件の捜査とは無関係なチームが担当。ブラットン本部長直轄で進められ、市警監察官やロス郡地検も捜査に加わるという。

 しかし、こうした対応に対し、元社長の代理人、ゲラゴス弁護士は「(第三者による)独立した調査を行うべきだ」と述べており、留置場の収容者の自殺が後を絶たない市警への批判も高まりつつある。

 在ロス日本総領事館の出木場(できば)勝・領事部長は報道陣に対し、「まずは市警による捜査の進展を見守る」としながらも「結果によっては邦人保護の観点から、日本政府として何らかの対応を取る可能性はある」と述べた。

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 □「一美の霊は永遠に安らぐことない」母親

 ■親族「自殺を考える精神状態でなかった」

 事件で殺害された三浦和義元社長の妻、一美さんの母、佐々木康子さん(75)と三浦元社長の親族は12日、それぞれコメントを発表した。

 佐々木さんのコメントは550字余り。「三浦(元社長)が死んでも、一美の無念は変わることはありません。悲しみ苦しんだ遺族の思いは消えることがありません。三浦(元社長)が死んで一件落着のような風潮がもう出始めています。こんな理不尽なことが許されてよいのでしょうか」と胸の内を吐露している。

 そして、「家族からの最後のお願い」として、「三浦(元社長)を有罪にする確信の元になった捜査資料を公開していただきたい。そうでないと、一美の霊は永遠に安らぐことがありません」と訴えている。

 一方、三浦元社長の親族は「三浦(元社長)は、サイパンよりロスへ向けても裁判で戦う姿勢を強く持っていました」と強調。三浦元社長が、自殺の数時間前にも、今後の戦略や食事にアレルギーがあることなどを外部に伝えていた点を指摘したうえで、「とても自殺を考える精神状態だったとは思えず、真実がいち早く解明されることを望んでいます」と記している。

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 □妻がロスへ向け出発

 自殺した三浦和義元社長の妻は12日午後、神奈川県平塚市にある自宅兼店舗を出発し、同夕、成田空港から日本航空機で米ロサンゼルスに向かった。

 空港に集まった報道陣は約50人。一般の旅行客が搭乗手続きを済ませた後、成田国際空港会社の社員が付き添う中、妻は報道陣の質問には一切答えず、終始、うつむいたまま搭乗手続きを済ませ、航空機に乗り込んだ。

 一方、殺害された一美さんの母親、佐々木康子さんの自宅=川崎市=の扉は固く閉ざされていた。報道陣の姿も消え、ひっそりと静まり返っていた。知人の女性は「事件に対する心境は尋ねられなかったが、必ず真実が明らかになると信じて、じっと待っていたのかもしれません」と話していた。

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