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2008年10月13日(月) 02時30分

<エチオピア誘拐>赤羽さん「銃の音で眠れない」電話で話す毎日新聞

 【パリ福井聡】先月22日にエチオピアで誘拐され、ソマリアの首都モガディシオで拘束されている国際医療支援団体「世界の医療団」(本部・パリ)の日本人医師、赤羽桂子さん(32)とオランダ人男性看護師は11日、犯人の監視下で毎日新聞との電話会見に応じた。2人とも身体的には健康だと話す一方、武装した犯人らの銃の操作音で眠れぬ夜が続くなど、不安な毎日を送っていると訴えた。

 赤羽さんは「長野県伊那市出身の長崎大学医学部大学院生(博士課程、医師歴7年)で、4月からエチオピア東部ソマリ州で治療や医薬品の配給をしてきました」と自己紹介。「日本の皆さんには心配をかけて申し訳ありません。オランダ人の同僚と一緒なので元気にしています」としっかりした声で話した。

 しかし、「ソマリア内を3週間転々とし、移動のない日は室内で自炊するほかすることもありません。どうして捕らわれたのか、何が行われているのか分からず、精神的には不安です」と苦しい心境を吐露。「犯人は全員武装していて、銃を操作する音で夜中にしばしば起こされよく眠れません」と訴えた。

 誘拐時の状況については「9月22日にエチオピア東部ソマリ州サラノ村で医療活動を終え、帰る途中に待ち伏せされた」と説明。ソマリア中部を移動した末、「10月5日からモガディシオ市内に滞在している」という。

 一緒に誘拐されたのはオランダ人看護師、ビレム・ソールズさん(27)。やや疲れた声で「犯人たちが何を考えているのか分からず不安だ」と話した。2人は食事以外で外へ出ることを許されていないという。

 クーラン・ファラと名乗る犯人グループの広報担当者は、10日の地元メディア向け会見と同様、「エチオピアが領内で拘束しているソマリア人囚人を解放すれば2人を解放する」と述べた。解放要求の人数と期限には「約350人。期限は設けていない」とのみ答え、2人の解放の見通しは明示しなかった。赤羽さんは日本語で、ソールズさんと工法担当者は英語でそれぞれ答えた。

 ソマリア人囚人の解放について現地関係者は「エチオピア政府が容易に応じるとは考えにくい」としている。

 ◇「無事救出を」赤羽さんの親類

 赤羽桂子さんの両親の出身地、長野県伊那市では、母千恵子さんら親族が一日も早い解放を願っている。

 桂子さんは子供時代、福岡大医学部寄生虫学教室に勤務していた父啓栄(ひろしげ)さん=05年8月死去=と千恵子さんに連れられ、伊那市へ帰省することもあったという。桂子さんとは遠い親類だという赤羽弘さん(71)は取材に対し「とにかく心配だ。無事救出してほしい」と深刻そうに語った。

 「誘拐されたらしい」という一報は半月前、外務省から千恵子さんの実家にあったという。弘さんは「それ以降、詳細が不明なので、ただ祈るしかない」と話した。また、弘さんは桂子さんの家族に連絡を取ったが、千恵子さんらは「そっとしておいてほしい」と答えたという。【大島英吾】

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