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2008年10月12日(日) 20時55分

北テロ支援指定解除 6カ国協議再開の期待も課題山積産経新聞

 【ワシントン=有元隆志】米政府は11日、北朝鮮へのテロ支援国家指定を解除した。北朝鮮がこれを受けて、中断している6カ国協議に復帰すれば、非核化プロセスが再び動きだす可能性も出てきた。ただ、米側が発表した、検証に関する合意を速やかに6カ国協議で採択できるかについては、北朝鮮側の出方が不透明なうえ、検証作業も難航が予想される。

 米国は6月に指定解除の手続きに着手したが、8月の指定解除発効期限の段階では解除を見送った。6カ国協議筋は今回、解除に踏み切った理由として、「8月の時点よりいくつかの点で前進がみられる」と説明。具体的には言及しなかったが、合意された検証の枠組みにはプルトニウムによる核計画のほか、ウラン濃縮による核計画、海外への核拡散活動も含まれた。

 日本の要望を受け入れた点もみられ、検証に参加する専門家として「非核国も含まれる」と明記された。日本と韓国を指したものだ。国際原子力機関(IAEA)要員も「支援的な役割」だが、参加が盛り込まれた。北朝鮮はIAEAを「煙たい存在」とみてきたが、米側は検証にIAEAは欠かせないとしてきた。

 専門家はすべての申告施設に立ち入りでき、未申告の場所も「双方の同意に基づいて」訪れることができる。標本採取を含む科学的手法の使用でも合意した。

 米国のソン・キム6カ国協議担当特使は11日の記者会見で、合意を文書化する6カ国協議を近い将来開催することが「次の段階」になると説明した。キム特使によると、北朝鮮は合意文書が採択されれば、すぐに検証に協力する用意があるとの考えを示している。

 もっとも合意は米側の発表であり、これまで6カ国協議での合意文書とりまとめに多くの注文をつけてきた北朝鮮が、すぐに了承するかは明確でない。

 合意文書が採択されたとしても、北朝鮮がすべての施設の検証をすんなり受け入れるとみる向きは少ない。核兵器や核実験場などは申告書に含めていないため、これらの検証作業には応じないとみられる。デサッター国務次官補(条約検証・順守担当)が「これから困難が待ち受けているだろう」と述べたように、合意の実現は容易な作業ではない。

 会見には、交渉責任者のヒル国務次官補(東アジア・太平洋担当)は姿をみせず、キム氏のほか検証部門や不拡散部門の責任者が説明にあたった。

 不拡散部門には「交渉から外されている」との不満が根強かったこともあり、政権内の「結束」を示すねらいとみられる。

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