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2008年10月12日(日) 18時58分

北テロ支援指定解除 日本がテロ指定すれば産経新聞

 米国が北朝鮮に対するテロ支援国家指定を解除したということは、病床にある将軍様の意向が十分に発揮されたことになる。まるで、「死せる孔明生ける仲達を走らす」かのようだ。病床に伏せる金正日総書記が、米国のヒル国務次官補を走らすの図である。

 政権も末期のブッシュ政権が、そんなに焦ってテロ国家の指定解除に走るなら、日本は独自にテロ国家の指定を肩代わりすることができるがどうか。

 北の将軍様の容体は、金王朝のカーテンに遮られて、ようとして知れない。金総書記は8月15日以降、その姿を見せていないから、同26日に北朝鮮外務省が発表した米朝協議の拒否声明が本当に彼の決断だったのかどうかも分からない。

 もちろん金総書記の重病説が有力だが、北は懸命に自国メディアを使ってサッカー観戦やら軍視察の写真やらで懸命に健在ぶりを誇示している。そして核実験の再開ポーズでダメを押す。劇場国家・北朝鮮の本領発揮である。

 三国志では、蜀の諸葛孔明と対(たい)峙(じ)していた魏の司馬仲達が、「孔明死す」と聞いて蜀軍を攻撃したところ反撃にあい、孔明の死を謀略と思って退却した。金正日総書記が孔明ほどの名将であるはずもないが、ヒル次官補の外交行動は、実際に「伏せる将軍様」の威光で進む核実験再開ムードに翻弄(ほんろう)されていた。

 米国の説明では、北朝鮮をテロ支援国家リストから暫定的に外し、北が合意を守らない場合は再度リストに戻すことで妥協したという。しかし、合意条件にウラン濃縮の検証が排除されているから、体制護持が絶対の金総書記とその取り巻きは形を変えて核開発を続けられる。

 まして、金総書記が倒れる前に「核開発の継続」を決断している可能性が高いから、取り巻きがその意思を勝手に変えることはできない。変更は将軍様死後なら遺訓に逆らったことになるし、回復すれば復帰後に処罰されるのがオチだ。

 放っておいても、世界不況が北の経済を襲うから、ブッシュ政権には経済的な締め付けに出るチャンスであった。あのリビアだって、大量破壊兵器の全計画を放棄して米国がリストから外すまで2年もかかっていた。ヒル次官補が「伏せる将軍様」に走らされた−と表現してどこが悪い。

 そこで、国家テロの拉致事件を抱える日本としては、独自に北をテロ国家指定に処する時期が到来したといえるがどうか。

 北朝鮮が米国のテロ国家指定で困るのは、世界銀行やアジア開発銀行からの融資が日米の反対で受けられないからだ。それなら、日本が代わりにテロ国家に指定して、国際金融機関などから北に援助できないようにすればよい。

 日本は世銀の第2の拠出国だし、アジア開銀は第1位だから実現は可能である。世銀総裁は米国人であり、アジア開銀は財務省OBの黒田東彦総裁だ。これまでの北朝鮮に対する経済制裁に加えれば、格好の揺さぶり材料になる。

 もっとも、経済面では日本独自の対北制裁を実行しても、軍事面では米国と密接な協調は欠かせない。北朝鮮のいまは将軍様倒れて核が残り、後継者が未決定という不安定のままであることだ。米韓両軍が最悪の半島有事に備え、北制圧の布陣にあることを忘れてはなるまい。(東京特派員 湯浅博)

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