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2008年10月12日(日) 18時33分

県立奈良病院が病院長公募 内部昇格では立ちゆかず産経新聞

 自治体病院が経営に行き詰まる中、奈良県は都道府県立病院では全国で初めて、県北部の基幹病院となっている県立奈良病院(奈良市)で病院長を公募する。内部からの昇格が慣例になっている院長人事では、約2億1000万円にのぼる累積赤字の改善は望めないとして、外部の人材に活路を求めた格好だ。

 奈良県によると、奈良病院に三室病院(三郷町)、五條病院(五條市)を合わせた県立3病院の累積決算は平成15年度に赤字に転落した。その後、赤字は増える傾向にあり、平成19年度には前年同期比約85%増の約21億5300億円に膨らんでいる。奈良病院単体の累積赤字も約2億1000万円にのぼり、「危機的状況」(荒井正吾知事)に陥っている。

 大都市圏の待遇のよい病院に医師が集中する傾向にも逆らえず、3病院の医師数は19年までの4年間で約20人減の145人に。患者数も約10万人減の約76万6500人にまで減り、経営悪化に拍車をかける悪循環に陥っている。

 公募するのは、25年以上の臨床経験を持つ医師免許取得者で、国籍は問わない。来年4月の採用で、年収は現在の県立病院長の平均より約1割多い1450万円程度を予定している。

 奈良県では荒井知事が19年5月に就任して以降、企業誘致を専属で担当する「企業立地コンシェルジュ」や、県新公会堂(奈良市)館長に民間人を採用するなど外部人材で組織改革に取り組んでいる。

 県では「内部昇格の人材では思いつかない斬新な発想を期待したい」としており、他の2病院の病院長についても公募を検討する。荒井知事は「病院経営改革に意欲のある医師はぜひ挑戦してほしい」と呼びかけている。

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