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2008年10月12日(日) 14時28分

米大統領選「南部戦線」に変化は? ミシシッピ大学のマーヴィン・キング准教授産経新聞

 米大統領選は民主党候補バラク・オバマ上院議員と共和党候補ジョン・マケイン上院議員の直接対決となる討論会が1回目と2回目とも南部のミシシッピ州とテネシー州で行われた。オバマ氏が全国的な世論調査では優位に立っているが、共和党の地盤といわれる「南部戦線」に変化はあるのか。南部の政治動向に詳しいミシシッピ大学のマーヴィン・キング准教授に聞いた。(ミシシッピ州オックスフォード 有元隆志)


 −−南部の黒人層はオバマ上院議員をどうみているか

 「彼らは非常に興奮し、オバマ氏の勝利を望んでいる。黒人の共和党員ですらオバマ氏を支持している人がいる。特に差別を経験した年配の黒人を中心にオバマ氏への期待は高い。ただ、オバマ氏を支持する人のなかには、何らかの不正が行われて、オバマ氏の当選が阻止されるのではないかとの疑念を持っている人はかなりいる」


 −−オバマ氏の父親はケニアからの留学生。母親は白人で、ハワイで生まれ育った。黒人層からは受け入れられているか

 「この国では部分的でも黒人の血が入っていると黒人とみなされる。オバマ氏がどこで生まれ育とうと、彼は黒人であり、黒人たちは彼を黒人とみなしている」


 −−オバマ氏は選挙戦で黒人の権利拡大問題を積極的に取り上げていないが

 「人種問題が中心となってほしくないためだ。南部ミシシッピ大での討論テーマを決める際、オバマ陣営がアファーマティブ・アクション(差別に対する積極的な改善措置)などが出てくる可能性がある内政よりも外交を取り上げたいと申し出たとの報道があるが、驚くことではない。オバマ氏が焦点をあてたいのは経済問題であって、黒人候補である点ではない」


 −−オバマ氏は民主党予備選では、南部諸州で圧勝した。本選挙での戦いは

 「オバマ陣営は共和党の強いジョージア州での勝利を目指し、テレビ広告など資金を投じた。しかし、共和党のマケイン上院議員が副大統領候補に保守派のアラスカ州のサラ・ペイリン知事を指名した1、2週間後に事実上ジョージア州から撤退した。マケイン氏がペイリン氏ではなく、ミネソタ州のティム・ポーレンティー知事ら別の人を指名していたら、オバマ氏は引き続きジョージア州で運動を続けただろう」


 −−南部諸州での黒人の人口比率は他の地域に比べて高いが、それでもオバマ氏が勝利するのは難しいか

 「南部諸州の多くが保守的な地域であるためだ。低率の税金を望み、信仰心が厚い。彼らは民主党については高い税金を課し、共和党よりも宗教に力点をおいていないとみている。1992年と96年に民主党のクリントン大統領が南部のいくつかの州で勝利したが、それはクリントン氏が南部のアーカンソー州出身だったからだ。

 黒人有権者の圧倒的多数派はオバマ氏支持だが、それでもオバマ氏は南部の多くで勝利することはできないだろう。可能性があるのは首都ワシントンに隣接するバージニア州とその隣のノースカロライナ州だ」


 −−なぜ共和党は南部諸州で強いのか

 「1964年の大統領選をみてほしい。共和党候補バリー・ゴールドウオーター候補が勝利した州は、地元アリゾナ州のほかは、ミシシッピ州やルイジアナ州など南部5州だけだった。彼は公民権法に反対し、同法に不満を抱いていた南部の白人層から支持を受けた。ジョンソン大統領は公民権法を推進したため、黒人層は民主党に流れた」


 −−南部で変化は起きているか

 「南部では白人か黒人かという時代が続いたが、ヒスパニック(南米)系の人口が増えてきており、今後10年、20年もすると南部の人口比率も変わってくるだろう」


 −−共和党は将来課題を抱えるということか

 「その通りだ。ヒスパニック系の人口増加は激しいが、共和党は移民流入に反対しているとみられている。現状維持を優先する保守派の立場からすると、新たな移民に反対するのはうなずけることではあるが、人口の変動に対応することが必要となろう」

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