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2008年10月12日(日) 14時28分

金融危機対策に世界で連携を ロンドン・シティのデビッド・ルイス市長産経新聞

 金融危機の波紋が米国から世界に広がる中で、世界の金融の中心地、ロンドンのシティから、デービッド・ルイス市長が来日し、10日に東京証券取引所(東京・兜町)を訪問した。金融分野での日英間の関係強化が目的で、東証での関係者らとの会談後、東証内で在京メディアと会見。2010年には危機を脱するというシティの見方を披露しつつ、各国が連携をとりながら、それぞれに効果的な対策をとる必要を訴えた。

 ルイス市長は、シティとその周辺で構成する「大ロンドン」(Greater London)を司るロンドン市長とは別にシティだけの市長職にある。ブレア前政権下で復活したロンドン市長と違って、その歴史は長く、ルイス氏で680代目になる。ただ、シティを代表するだけに英国の「金融サービス産業大使」を兼ね、英国内の他地域の金融センターも含めて海外との交流や英金融産業のピーアールに努めている。

 −−来日にあたり市長からひとこと

 「米金融危機の状況は厳しい。影響を受けない国はないといえる。だが、基本的な問題は世界的な行動が求められていることだ。米政府は危機に対応し、英国も合理的な対処をした。必要なのは世界的な連携である。日本も重要な役割を演じることを期待したい。この1カ月の間もよいことはあった。各国の金融機関が連携して対応した。危機はしばらく続くと予測されるが、いずれ終わる。危機を脱したときの状況と向き合うことをいまから準備しておくことも必要だ。

 日本も規制緩和、市場自由化の継続が重要だ。金融危機を乗り越えるうえで大きな恩恵をもたらすだろう。金融庁や日銀の関係者との会談で、日本としてベターな規制への移行、海外企業の日本市場への受け入れによって東京を世界の金融センターにしていくプランを聞き、勇気づけられた。日本の経済規模を考えると、東京の地位は今後もさらに上がる。そのための行動が求められる。ロンドン証券取引所と東京証券取引所の新たな連携も強化したい」

 −−今回の訪日の目的は

 「日本とより緊密に金融分野でのパートナーシップを探ることだ。日本は世界2位の経済大国。欧州連合(EU)、米国と世界の経済ブロックとして比肩する重要な国だからだ」

 −−金融危機が終わるという根拠は

 「戦後60年、程度の差はあれ、10年周期で金融危機はめぐってきた。発端は銀行が市場に関して誤った判断をし、内容不明の投資をすることにあった。いまの危機がいつ終了するかはだれもはっきりしたことは言えないが、ロンドンのシティでは、回復する前に悪い場面に直面するもので、向こう12カ月のうちに欧州のインフレは改善し、銀行間の信用も回復して、2010年には元に戻るのではないかというのがよく聞く見方だ」

 −−米政府の公的資金注入の動きをどう思うか

 「ポールソン米財務長官の判断に賛成している。さらに必要なステップをとっていかないといけないが、銀行再編で小さい機関が大きい機関の傘下に入っていくともポールソン財務長官は語った。ただ、覚えておいてほしいのは、預金者が預金を失うことを許すような政府はないということだ」

 −−欧州の対策についてはどうか

 「グローバルコーディネーションが最も大事だ。ひとつの世界的なプランでなんとかなるものではない。英政府は2日前に危機対応を発表した。米国と違うものであり、いろいろな対処がある。英国もルールは多いが、米国の複数の機関による規制よりは柔軟に対処している。英国の監督機関は一つで、金融機関と柔軟にディスカッションしている。こうした英国のアプローチは強いと思う」

(蔭山実)

 デービッド・ルイス 1947年香港生まれ。法律家を志し、カレッジなどで法律を学んだ後、1969年にロンドンのシティにある法律事務所に入り、ロンドンと香港で約40年間勤務した。その間、大規模な企業買収の業務に携わる一方、証券取引所での上場に関するアドバイスなどを行ってきた。2007年11月に第680代のシティ市長に就任(任期は1年)。「金融大使」として英国を代表して各国首脳の訪問を受けてセミナーなどを主催するほか、海外も数多く訪問してシティのサービスや専門知識を広めている。

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