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2008年10月11日(土) 15時44分

【そっとメモって…国語私典】大学産経新聞

 〇かつては「最高学府」などと呼ばれた大学だが、今では誰もが楽々と入れ、楽しい学生生活を謳歌(おうか)できる「最高楽府」に成り下がった。

 

 ≪少子化にもかかわらず大学側が定員を増やし続けたため、大学が大幅に広き門となってしまった≫(和田秀樹・国際医療福祉大学教授、9月1日付産経)

 

 〇東京は、とにかく大学が多く、石を投げれば必ず大学に当たる(だから石を投げてはならない)。

 

 ≪…明治41年に夏目漱石が書いた「三四郎」の一場面だ。「するとこれから大学へ入るのですね」「ええ」「法科ですか」「いいえ文科です」…。▼どこの学校かと尋ねなくても、当時はこれで会話が成り立ったのだ。なにしろ正式な大学といえば東京と京都、できたばかりの東北。この3つの帝大しかなかった≫(8月1日付日経)

 

 〇大学生の質の低下も深刻で、分数計算のできないのはザラ。もちろん勝海舟や坂本龍馬も知らない。

 

 ≪文部科学省は来年度から、新入生に高校時代の授業内容を復習させる補習授業などの取り組みに補助金を交付する方針を決めた≫(9月24日付産経)

 

 〇文科省も何を考えているんだろう、というのが正直な気持ちだ。

 

 ≪三島由紀夫の著書が読みたい、というので出したら、ページをくっていたが、現代語訳ではないのか、と返してよこした。三島由紀夫を、もはや「原文」で読めない世代が出てきているのである≫(出久根達郎「いつのまにやら本の虫」)

 

 〇古書店主でもあった出久根さんの嘆き節である。

 〇大学生よ、ちっとは二宮金次郎を見習ったらどうだ。(銅像の)金次郎は「大学」という本を手にしている。「大学」といっても受験参考書ではない。中国の有名な経典で、(読んだことがないので偉そうには言えないが)とても難しい本だ(そうだ)。金次郎が「たきぎの上手な採集法」とかの本を読むのならともかく、なぜこんなに難しい本を読むのか。貧しい彼に「大学」は一体、何の役に立つというのか。

 

 ≪彼にとって学問をすること自体が目的だったのです。…受験勉強のためではありません。ここがポイントです。…学問は受験のためにやるのではない、立身出世とも関係ない、「学問それ自身が目的なんだ」ということを二宮金次郎は身をもって教えてくれたのです≫(総合法令刊「人にはなぜ教育が必要なのか」)

 

  〇東京駅近くの八重洲ブックセンター正面入り口には、二宮金次郎の銅像、いや金箔(きんぱく)が張られた金像がある。僕も読書の意欲を奮い立たせるため、この像を時々拝みにいく。お賽銭(さいせん)代わりに同センターで本を買って帰ることにしている。(東京校閲部長 清湖口敏)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081011-00000118-san-soci