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2008年10月11日(土) 15時23分

お年寄り、若者に人気上昇中…「ゆったり感」に癒やされ読売新聞

 「お年寄り」に魅了される若者が増えているという。祖父母の日常をつづるブログや高齢者の半生を聞き書きする活動が人気で、おじいちゃん、おばあちゃんのアイドル「孫(まご)ドル」を目指す芸能人も登場している。

 ◆祖母の日常ブログに…累計アクセス520万件◆

 東京の玩具デザイン会社のデザイナー、永島牧子さん(25)が運営するブログ「祖母ログ」は2005年4月の開設以来、アクセスが累計で520万件を超えた。前橋市に離れて暮らす祖母ヒデさん(82)の日常を、母親の直子さん(53)が写真と文章で記録し、永島さんがブログにアップしている。

 家族は反響の大きさにびっくり。永島さんは「長い年月を生きて熟した感じ。存在だけで絵になる」とヒデさんを評する。ブログを見た20代のファンから手紙が届き、街を歩けば声をかけられる祖母がいとおしい。

 ◆戦中戦後、子育て…聞き書きイベント◆

 お年寄りの戦中戦後の体験を聞き書きで記録する活動に参加する若者も増えている。NPO法人「昭和の記憶」(事務局・東京都千代田区)が7日、横浜市の特養ホーム「ヴェルデの森」で開いた聞き書きイベントには8人のボランティアが参加。入所者5人の半生を聞き取った。

 戦中戦後のこと、子育てのこと−−。93歳の女性から聞き取った横浜市の主婦、上田真理さん(25)は「つらいことがあっても、逃げずに上を向いて生きる大切さを教わった」と感銘を受けていた。

 03年から活動に携わる事務局長の滝沢尚子さん(27)によると、ここ2、3年、大学生など若い世代の参加者が目立つという。「イエ制度など因習や制約が多い中で力強く生きてきた高齢者と話し、生きるヒントを見つけたいという心理があるようです」

 ◆「孫のようなアイドル」目指す◆

 「陽佳(ようか)」という芸名で芸能活動をする女性(24)は昨年夏から東京・巣鴨などで高齢者の話を聞き、記録に残している。その模様が今月、テレビで紹介された。「全国の高齢者の孫のようなアイドルになりたい」と自称「孫ドル」。「亀の甲より年の功というか。『考え込まず頑張れ』って逆に励まされます」

 厚労省によると、07年6月時点の全国4802万7000世帯のうち、3世代で暮らしているのは404万2000世帯で全体の約8%。1986年の約15%と比べ半減しており、祖父母世代との交流は希少価値だ。

 第一生命経済研究所の北村安樹(あき)子(こ)研究員は「若者の周りに、評価や利害関係を気にせず付き合える年長者がいなくなっている」と指摘する。

 「お年寄りの日常に接し、語らうという状況は、あえて作り出さないと身近になくなってしまった」

 ◆ゆったりした雰囲気で癒やし◆

 愛されるおじいちゃんの代表、聖路加国際病院理事長の日野原重明さん(97)にも聞いた。「今は両親や先生、社会があまりに多忙。ゆったりとした雰囲気を持つ祖父母世代に癒やされるんでしょう」

 祖母ログの永島さんも「おじいちゃん、おばあちゃんは多くを求めてこない。独特の空気感が好き」と語る。

 記者にも元気な祖父(89)がいる。散歩中にザクロをもいで食べたり、近所の桜に水をやったり、穏やかに暮らすすべを知っている。その域に達するには、この先どんな修行を重ねたらいいのかしら。(吉永亜希子)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081011-00000025-yom-soci