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2008年10月10日(金) 17時43分

介護保険制度の現状と課題、厚労省課長が講演医療介護CBニュース

 後期高齢者医療制度の見直しや来年4月の介護報酬改定など、高齢者の医療や介護を取り巻く環境が変化する中、医療経済フォーラム・ジャパンは10月9日、東京都内で「高齢者の医療と介護〜介護報酬の行方を中心に高齢者への医療のあり方を探る」をテーマにシンポジウムを開いた。厚生労働省老健局老人保健課長の鈴木康裕氏が、「介護保険制度の現状と課題」と題して基調講演を行った。

 鈴木氏は、介護保険制度が発足した2000年以来、高齢者の数の伸びと並行して、被保険者の数が約25%の伸びを見せる一方で、要介護認定を受けた人の数が約107%増加した点を指摘。「(要介護認定を受けた人の数は)2倍以上となっており、明らかに高齢者数の伸びを上回る。介護保険サービスが急速に普及し、これまで(サービスの利用に)手を挙げなかった人が手を挙げるようになっているということだと思う」と述べた。また、「(制度が発足した2000年度の実績では)介護保険の総費用が3.6兆円だったのに対し、08年度予算では7.4兆円となっている」と、財政規模の拡大を指摘した。
 さらに、施設サービスの利用者数が2000年4月の52万人から07年9月には82万人と、6割程度の伸びを見せる一方で、居宅サービスの利用者数が97万人から263万人と、2.5倍以上になっている点を指摘。「施設から在宅へ、という流れがある」との認識を示した。

 また鈴木氏は、「現在80代の人は、戦中・戦後に思春期を迎え、ある意味でとても我慢強く、グループでのケアも比較的受け入れやすい素地を持つ。だが、これからの高齢者は、一対一の、『個』のサービスしか受け入れないと思う」との見方を示し、「サービスの提供の在り方や、コストの掛かり方が変わってくる」と述べた。
 今後、急速に高齢化が進むと考えられる首都圏をはじめとする都市部においては、「高齢者の『住まい』が大きな課題になる」と指摘。土地が少なく、地価も高いなどの問題があるため、「従来通りのモデルによる対策は通用しない」と、使われなくなった公共施設の活用の必要性も示唆した。
 
 介護人材の確保については、若い男性職員の確保の必要性を強調。介護人材の約7割を占める女性のさらなる活用、高齢者や外国人の活用の必要性も示唆した。このほか、サービス付き高齢者住宅の整備、訪問看護サービスの拡充の必要性などを指摘した。

 さらに、鈴木氏は介護ビジネスの将来性についても指摘。1990-2000年の10年間における産業別の国内総生産額の伸び率は、全産業平均が11.1%なのに対し、社会保障分野は56.1%との統計を示した上で、「社会保障分野の財政負担が増えているということかもしれないが、マーケットのパイが増えているということでもある。これからの10年、20年、30年の間、平均年2—3%の確実なマーケットの拡大が見込まれる産業は、(介護ビジネスの)ほかにあまりないと思う」と語った。

 続くパネルディスカッションでは、財務省主計局主計官の太田充氏、日本医師会会長の唐澤祥人氏、慶大大学院教授の田中滋氏らをパネリストに、介護の財源確保の在り方や、医療・介護現場の現状などについて意見交換が行われた。


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