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2008年10月10日(金) 20時23分

<学生無年金訴訟>原告の敗訴確定…最高裁判決毎日新聞

 成人学生の国民年金加入が任意だった91年4月以前に、未加入のまま統合失調症と診断された東京都の男性2人が、社会保険庁長官に障害基礎年金の支給を求めた2件の訴訟の上告審判決で、最高裁第2小法廷(古田佑紀裁判長)は10日、いずれも請求を退けた。原告敗訴が確定した。

 国民年金法は、初診日が20歳未満の障害者には未加入でも年金を支給すると定める。2人は20歳を過ぎてから診療を受けたが、統合失調症は発症に気付きにくく受診まで時間がかかるケースが多いとして「後で発症が20歳前と診断されれば支給を認めるべきだ」と主張した。

 判決は同法が初診日を「初めて医師の診療を受けた日」と明確に定義していると指摘。そのうえで「画一的で公平な判断のため、診療日で適用範囲を区切ったのが立法趣旨」と原告側主張を退けた。4人の裁判官のうち今井功裁判官は「一般の疾病と同様に初診日を基準とするのは、制度の趣旨に沿わない」と反対意見を述べた。

 1審は2件とも「初診日」要件を柔軟に解釈して原告の請求を認めた。2審では1件が原告逆転敗訴、1件は勝訴が維持され結論が分かれていた。

 判決後、原告の蓮実浩吉さん(48)は「強い思いを込めてきたのに届かず、失恋と同じ気持ち」と話した。【北村和巳】

 ◇解説…司法による救済、限界示す

 初診日要件を厳格に解釈した最高裁判決は、司法による救済の限界を示した。全国の30人が9地裁に起こした学生無年金障害者訴訟は、立法の違憲性と初診日要件の解釈が争われた。最高裁は07年9月に違憲主張を退けており、この日の判決で大半の原告が敗訴する見通しとなった。

 成人学生の国民年金への任意加入は61年から30年間続き、その間に推計約4000人の学生無年金障害者を生んだ。訴訟はこうした制度のはざまで苦しむ人々の実態を明らかにし、05年の特別障害給付金制度の創設につなげた点で意義は大きい。

 しかし、障害基礎年金が月額8万2000〜6万6000円なのに対し、給付金は月額5万〜4万円にとどまり、老齢基礎年金の掛け金も免除されない。こうした事態の原因が、政府の周知不足や国会の法整備の遅れにあるのは明らかだ。その責任を自覚した柔軟な制度運用が求められる。【北村和巳】

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081010-00000117-mai-soci