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2008年10月10日(金) 23時11分

国選弁護費 限度額まで水増し 黒瀬氏、制度熟知か毎日新聞

 捜査段階の容疑者に国費で弁護士をつける被疑者国選弁護制度を巡る水増し請求問題で、黒瀬文平弁護士(67)=岡山弁護士会=が今年5月、限度額いっぱいの12万4000円を日本司法支援センター(法テラス)に請求、受領していたことが分かった。適正な報酬額は6万4000円で差額に当たる6万円を過大に受領していたという。制度を熟知していた疑いがあり法テラスが調査を進めている。

【関連写真】「当分、不在」と書かれた張り紙が新聞受けに張られた黒瀬文平弁護士の事務所

 岡山弁護士会の秋山義信会長は10日、岡山市内で記者会見し「大変遺憾。おわび申し上げる」と謝罪した。黒瀬弁護士は07年3月〜今年5月、受任した7件の報酬のすべてで水増し請求し、計24回しか容疑者と接見していないのに47回と報告。総額34万1700円を過大に請求し、うち約20万円は既に受領しているという。

 法テラス作成の「国選弁護関連業務の解説」によると、逮捕から起訴まで20日間かかる通常の事件の場合、接見回数が1回なら報酬は2万4000円、接見5回までは2回目以降を1回2万円として増額する。6回目以降は増額幅が減り8回で頭打ちになる。

 関係者によると、黒瀬弁護士は今年4月下旬、強盗わいせつ致傷事件の容疑者の国選弁護を受任。5月中旬に容疑者が起訴され事件が終結した後、弁護報酬の請求書に当たる「被疑者国選弁護報告書」を法テラス岡山(岡山市)に提出した。実際の接見回数は3回で適正な報酬は6万4000円だったのに、接見8回と記載し限度額の12万4000円を受領したという。

 ただ常に限度額いっぱいの8回と記載したわけではなく「5回」などと記載したケースもあった。しかし9回以上と記載したケースは一件もなかった。黒瀬弁護士は調査に「記載に一部誤りがあるが故意ではない」と説明し、水増し分を返金する意向を明らかにしているという。【小林直、大場弘行、石川勝義】

 法テラスの寺井一弘理事長の話 過大請求が疑われる事案が発生したことは甚だ遺憾。事実関係の詳細について調査したうえで厳正に対処する。

 ◇黒瀬氏以外にも法テラス調査

 法テラスは10日、被疑者国選弁護報酬の請求の際、弁護士に接見回数を裏付ける文書の提出を求めていない現行の方法について変更を検討していることや、黒瀬文平弁護士以外についても不正の有無を調査する方針を明らかにした。

 田中晴雄事務局次長は記者団に「接見回数を確認するための方法について日本弁護士連合会、法務省と相談を始めている。警察とも今後相談する」と話した。さらに「(過去のすべての請求から)無作為抽出し、不正がないかどうか調査することも考えたい」と述べた。【大場弘行】

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