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2008年10月10日(金) 00時00分

アンドロイド端末が11月に登場読売新聞


YouTubeに掲載されたアンドロイド端末「Dream」のビデオ映像

 iPhoneのブームも一段落したかに見える米国で、これに対抗する新ケータイの登場が間近に迫っている。グーグルのOS「Android」を搭載した最初の携帯電話が、今年11月に発売されることが、ほぼ決まったのだ。

 「Dream」と名付けられた同端末は、台湾の大手携帯端末メーカー「HTC(宏達国際電子)」が開発し米国で第4位のキャリアー「T−Mobile」が提供する。アイフォーンやアンドロイド搭載の端末は、「スマートフォン」と総称される高機能ケータイの仲間だ。スマートフォンは特に欧米で急速に市場を拡大している。これら以外にも、RIM(カナダ)の「BlackBerry」、米Palm製の各種端末、世界最大の携帯電話メーカー、Nokiaが提供するSymbian OS(*)搭載端末などがある。

米でスマートフォンが普及してきた背景

 スマートフォンは単なる通話やインターネット機能だけではなく、スケジューリングや個人情報管理を始め、多様な情報処理能力を備えた掌サイズの“パソコン”だ。使い方は従来の携帯電話とは大きく異なる。

 すなわち、これまでの日本のケータイでは、キャリアーが定めた機能に限定されていたが、スマートフォンではユーザーが無線インターネット経由で好きなソフトをダウンロードして使う。つまり、端末を自分好みにカスタマイズできる点が最大の特徴だ。こうした点でも、スマートフォンはやはり電話というよりパソコンに近い。

 特に米国でスマートフォンが普及してきた背景には、米連邦通信委員会(FCC)が昨年定めた「オープンアクセス規則」がある。この新ルールは、「キャリアーは携帯電話に搭載されるソフト(機能)に対し、何の拘束も課してはならない」と定めた。裏を返せば、米国の大手キャリアーはそれまで、通信回線の独占力を行使して携帯電話の機能開発に様々な拘束をかけてきたということだ。

 この状況を打破すべく、アップルやGoogleを中心とする米IT業界はロビー活動を繰り広げ、「オープンアクセス規則」が採択された。これに刺激され、日本の総務省も昨年、同様の「モバイルビジネスのオープン化」政策を実行に移した。結果、アイフォーンやアンドロイドが生まれ、多様なモバイルソフトの開発が促されることになった。

 既に今年8月までにアイフォーン用の各種ソフトは、6000万本以上がダウンロードされた。近々日本でも、ユーザーが自由にアプリケーションを携帯端末に搭載して使うようになるだろう。

携帯OSは統一されるか

 こうした時代を間近に控え、今、モバイル業界で注目されているのが、OS統一の行方だ。現在のモバイル産業は、80年代前半のパソコン産業と似た状況にある。つまり、当時のパソコン産業は、それまでのOS乱立時代を経て、マイクロソフトの「MS−DOS」と後継の「ウィンドウズ」にほぼ統一されていった。いわゆる「業界標準」である。

 一方、現在のモバイル産業にはアイフォーンに搭載された「マックOS」、グーグルの「アンドロイド」、ノキアの「シンビアン」、そしてマイクロソフトの「ウィンドウズモバイル」など多士済々。今後これらが淘汰され、80年代のパソコン産業のように、1つのOSに収れんするのか、このまま乱立した状態が続くのか。現時点で確たることはいえない。

 OSの統一には、プラスとマイナスの両面がある。プラス面は、あらゆる携帯端末のプラットフォームが統一されるため、各種ソフトの開発コストが削減され、その普及が促される。マイナス面は、統一OSの座を勝ち得た企業の独占力が、業界の健全な発達を妨げる恐れがあることだ。しかし、消費者の立場から見ると、使えるソフトの幅が広がるという意味は大きく、OSが統一される方が望ましいのではないか。(ジャーナリスト・ 小林雅一/2008年9月24日発売「YOMIURI PC」2008年11月号から)

* 英PSION(サイオン)社が超小型手持ちPC向けに開発したOSをスマートフォン向けに改良したOSで、世界の携帯電話の約7割に搭載。元来の大株主ノキアが持ち株比率91%獲得を目指すと同時に、同OSのオープンソース化を計画している。

http://www.yomiuri.co.jp/net/frompc/20081007nt0a.htm