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2008年10月10日(金) 14時23分

蔓延する市場の不透明感、不況の今だからこそ考える生産アウトソーシングjapan.internet.com

EMSOne で扱っている日々のニュースは、主に IT 関連製品の生産企業(いわゆる EMS あるいは ODM 企業)と関連する市場情報を網羅しています。この市場は、CM(Contract Manufacturer=図面から部品まで OEM 企業が準備して、CM はアッセンブリーサービスのみを提供)と呼ばれるサービス形態から始まり、現在は EMS そして ODM(設計から生産まで提供するサービス)へと拡大してきました。

【画像が掲載された記事】

【EMS】(Electronics Manufacturing Services)
サプライチェーン構成〜基板設計〜生産管理・部品調達〜基板実装〜組立〜BTO〜出荷管理〜修理

【ODM】(Original Design Manufacturer)
上記に加えて、OEM 企業の要求に応じた製品設計〜開発まで受託
注:ODM 企業は台湾企業が市場を独占

こうした EMS/ODM 企業の生産拠点は、大量の人材が必要なこともあって中国が世界の中心地となっています。特に大量生産が必要なノート PC(世界の9割以上が EMS/ODM によって生産されている)や携帯電話、液晶テレビ、プリンター、MP3、DVD 等の身の回りにある様々は製品から、最近では医療分野にまで広がり始めています。

多くの日系メーカーはこれまで、地理的に近いということもあって自社で中国あるいはその他のアジア地域に生産工場の設立を進めてきました。しかし、中国の例でいえば、上がり続けていた労働コストが今年1月に施行された「労働管理法」によって決定的となり、高騰し続ける人民元、各種規制の強化も相まって新たに工場を設立あるいは拡張しようとする企業が激減しているように見られます。また、一時注目を浴びたベトナムでも高騰するインフレが収まらず、これが労働者の賃上げ要求に繋がって各地で労働ストが相次ぐ事態を引き起こしました。

こうした中、新たに大手企業を中心として EMS あるいは ODM 企業への生産委託が今年に入ってから増え続けています。特に金融危機が全世界的に影響を広げ始めている現在、この動きは益々活発化すると予想されます。

では、自社生産とアウトソーシングでどのような違いがあるのか、メリットは? デメリットは? こうした疑問に対する回答はそれぞれ各社各様によって答えは違ってきます。しかしそう言っても始まりませんので、以下に典型的な例についての説明をいたします。

以下は、同等製品を作っている2社の比較モデルです。1は自社で生産を行っている企業、2は外部での委託生産による商品調達を行っている企業をモデル化しています。両社ともに変動費(Variable cost = VC)、 収益(Revenue = R)は同等条件の下での比較です。

2の例では自社内での生産によって発生する間接諸経費が含まれていません。それによって、1と比較して低い固定資産および総経費での事業遂行が可能となっています。

VC(変動費)+FC(固定費)=TC(総コスト)

中国、インドあるいはその他の地域においてアウトソーシングを活用している企業は、そうでない企業に比べ一般的に、それぞれ高い投資回収率、自己資本利益率、総資産利益率を達成しています。加えてアウトソーシングを活用している企業はそうでない企業と比べ損益分岐点がより低い収益、少ない台数の下での達成が可能であると見て取れます。

先ずは社内でよく検討することから初め、その結果、アウトソーシングを利用するのであれば出来るだけ早く行動に移ることをお勧めします。

ここで質問です。

−グローバルでの競争・市場拡大が必要な今、自社内で全て構築する余裕があるか?
−他社と比べて圧倒的強みがあるか?
−将来にわたって自社のビジネスはリーダーとして君臨し続けられるか?

もし、上記質問のうちひとつでも「Yes」の答えがあるのでしたら、戦略的理由からアウトソーシングする必要はありません。しかし、そうでないならば、出来るだけ早くアウトソーシングを検討することをお勧めします。

EMS/ODM 企業との協力を推し進めていく初めの段階では意思決定プロセスを、そしてすぐに EMS/ODM 企業から彼らの製造経験に基づくコスト削減を行うための様々な提案がもたらされることと思います。(例えばよりコストの安い代替部品や、製造しやすいように設計変更の提案など)そうした努力なしには OEM の TTM(Time-to-market)戦略への貢献も出来ませんし、果ては同製品の市場シェアを失うことにもつながりなりかねません。

このような利点があるにもかかわらず多くの企業幹部はアウトソーシングに踏み切れていません。例えばひとつの障害として、企業幹部が生産部隊(アウトソーシング企業を含む)に対し、自社の根幹部分への貢献度を求めているからです。

その他、委託生産に切り替えることによってどれだけ社内の固定資産の削減につながるのかといった部分のみを判断するメーカー幹部も多く、EMS への委託生産、あるいは ODM を利用しての開発等の価値を判断し切れていない部分も多々見受けられます。これ以外にも材料購入において圧倒的な規模の経済を追い求めている EMS 企業のサプライチェーンを、あたかも自社のものとして利用出来るというメリットについても考慮する必要があります。これについては別レポートにて書きたいと思います。

記事提供:EMS One

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