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2008年10月07日(火) 00時00分

大阪発・気持ちを読み取る猫「シロちゃん」読売新聞


猫好きじゃなくても「シロちゃん」は好き!というお客さんも。(撮影:鈴木美也子)

「カンテ・グランデ」の看板猫「シロちゃん」(推定13歳、女の子)(撮影:鈴木美也子)

「カンテ・グランデ」で、有名ミュージシャンがアルバイトをしていたとか。(撮影:鈴木美也子)
八代亜紀似の瞳に注目!

 猫ファンにとって気になることのひとつ。それは、「猫は人間のことばを理解しているのか?」ということ。「○○(名前)ちゃん!」とか「ご飯よー」「ブラッシングだよー」など、日常生活で重要な人間語については、まず理解していると言っていいだろう。

 大好きな飼い主のことばなら、なおさら理解度が増すというもの。呼ばれた猫ちゃんの走って飛んでくるときの愛らしさといったら!どの飼い主さんの顔も目じりがこれ以上ないくらい下がり、口角はだらしなく上がりきっていることだろう。そして、ご飯を食べる猫ちゃんに、うっかり、「おいちいでちゅかー?」

 猫はそのことば(笑)を聞いてこっちを見上げながら目を細める。ウチでは“おいしいよ”の合図だ。「よかったねー。おいちいねー」……。ちょっとした寸劇だ……。

 猫を飼ったことのない友達の前では、やらないよう、注意が必要だ。次回からのメールの返事が急によそよそしくなる恐れがある。

 大阪の有名老舗カフェ「カンテ・グランデ」を訪ねたときのこと。とても不思議な体験をした。看板猫は、お鼻はピンク、肉球は黒の「シロちゃん」。取材班が来るということで、スタッフが外に出さずにおいてくれたのだが、姿が見えない。雑貨やオブジェのあふれる、広い店内のどこかにいるらしい。「猫は?」「探すから待って」カメラマン鈴木氏と二言三言話したそのとき。「ミャミャー♪」と鳴きながら(話しながら、のほうがしっくりくるが)、私たちの目の前に愛らしい姿を現した。「これがシロですわ」とスタッフに紹介された彼女は、「よろしくね」とでもいうように首をかしげた。

 びっくりした。「シロちゃーん」と呼んだわけでもない。なにかおみやげを持ってきたわけでもない。ただシロちゃんに会いたい気持ちで訪ねただけなのに。

 シロちゃんはアメリカンショートヘアのMIX。白とグレーのあいだのような淡く美しい被毛と、濡れたような眼差しが最高に美しい。とくにその瞳からは、いままでの波乱万丈な猫生から醸し出されたかのような、情の深さと頭の良さを感じたような気がした。人間で言うと、歌っているときの歌手・八代亜紀さんのような瞳(笑)。シロちゃんはハスキーボイスではないけれど。

 取材が済み、スタッフにあいさつをして店を出た。シロちゃんはすでにいつものお散歩へ出掛けたあと。「さいごにシロちゃんにもう一度会いたかったな」とつぶやいたその瞬間。

 「ニャーニャニャー!」どこからかシロちゃんの声が。駐車場の奥から走ってやってきてくれたのだ!「また来てね」「ぜったい来るよ」「元気でいるわ」といったような会話を交わし、しばし別れを惜しんだあと、わたしたちは「カンテ・グランデ」を後にした。

 「ことばにしなければ伝わらない」ことが多い、ややこしい人間社会に慣れてしまったわたしたち。常にどう伝えるかで悩んでいる気がする。一方、感情を読み取る能力に優れ、しなやかに生きる猫たち。たとえわたしたちがどんなにイケてても、またはダサい格好をしていても、平等に気持ちを読み取るのだろう。ことばに出来ない気持ちが一番大切なことを、猫たちは知っているかのように。

    カンテ・グランデ中津本店       場所 大阪府大阪市北区中津3-32-2 アルティスタ中津B1       TEL:06-6372-0801

http://www.yomiuri.co.jp/komachi/pet/neko/neko081007.htm