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2008年10月07日(火) 09時00分

不動産デベロッパーから建設業界へ飛び火 止まらない負の連鎖MONEYzine

■建設不況と呼んでも過言ではない状況

 新興勢を中心とした不動産・デベロッパーの倒産が相次いでおり、次なる焦点は建設業界、それも中堅以上にも移っている。

 未上場組では海洋土木のりんかい日産建設、宮崎県の最大手だった志多組などが経営破綻。かつては東証一部に上場していた多田建設も9月22日に会社更生法の手続開始の決定を受けている。多田建設の申請は何と3度目のことである。

 上場組では7月に真柄建設と三平建設が相次いで民事再生法の適用を申請。会社更生法の場合は管財人が選定されるが、こちらは基本的に現経営陣らが再建にあたるというもの。07年に経営破綻・上場廃止したみらい建設グループは、高松建設らの支援を得て経営再建中。みらい建設グループは、三平建設の主要株主という関係でもある。

 建設不況と呼んでも過言ではない状況は、準大手やスーパーゼネコンも直撃。大手ゼネコンの大成建設は、去る9月25日、「09年3月期は従来の170億円の黒字予想から130億円の赤字に」と、黒字から赤字への下方修正を発表した。

 上場廃止に向けて動いたのはフジタだ。フジタは1999年と02年に債務免除などの金融支援を受けたほか、05年9月には、ゴールドマン・サックスの関連会社による410億円増資の引き受け、さらには金融機関による3度目の支援、総額989億円の債務免除などを受けている経緯がある。06年に1021億円(05年は1452億円の赤字)の当期純利益に転じ、有利子負債も1594億円から33億円へ劇的に減少しているのはそのためである。

【関連写真】不動産デベロッパーから建設業界へ飛び火 止まらない負の連鎖

 今回はゴールドマンの関係会社であるフジタ・ホールディングスが、保有済以外の約1809万株を1株200円、およそ36億円で買取り、完全子会社化にするというもの。フジタは発行している優先株が普通株に転換されれば、1株利益の希薄化が進む懸念もささやかれていた。出資の回収のためには再上場を目指すか、買い手を捜すのが一般的だが、世界的な金融不安で揺れるゴールドマンが今後どう動くのかも注目したい。

■建設業界の給料は全国平均を上回る水準

 さて、建設会社の従業員の給与も見ておこう。

 国税庁によれば、全国4543万人の給与所得者の平均給与は437万円(07年分)。業種別でいえば、建設業は454万円で、691万円の金融・保険、それに情報通信や化学などに次ぎ、平均を上回っていた。もちろん、準大手・大手は全国平均を凌ぐレベルにあることはいうまでもない。

 スーパーゼネコン5社では、横バイの大林組を除いてはアップが目立つ。04年にはいずれも800万円台だった鹿島、大成建設、清水建設、竹中工務店の4社は、08年には900万円台になっている。

 では準大手・中堅はどうか。

 先に触れたフジタは、04年には610万円だった平均年収が717万円と100万円アップ。長谷工コーポレーションは04年の640万円が160万円上昇し800万円台に乗ってきた。

 三井住友建設や東急建設、熊谷組、ハザマ、飛島建設も金融支援を受けた組だが、長谷工やフジタと比べると増額分は少々。明暗を分けた形だ。

 賃貸建物の建築から仲介・管理・家賃保証まで手がけているのが大東建託。この4年で2600人も従業員が増えた(単体ベース)こともあり、平均年収は900万円台から800万円台に下降しているが、そもそもは、従業員平均年収が高い会社として知られている。同社の気がかりは、創業オーナーの自社株売却報道だろう。正式には「資本政策を見直している」という発表にとどまっているが、社員にとってはオーナーの変更が気にならないはずはない。

 公共事業の削減にともなう受注減はいうまでもなく、不動産デベロッパーの相次ぐ破綻を受け、債権の回収が困難になれば損失処理も迫られる。マンションを中心とした新設住宅着工の減少は、耐震強度偽装問題の発覚・建築基準法の改正にともなう「一時的」なものとの見方もあったが、ここにきて長期化が避けられない様相を呈してきた。縮小が続く国内市場から海外にシフトしようにも、海外案件受注後の急激な資材・人件費の高騰で採算割れも目立つという。主要45社だけでも海外受注高はおよそ1兆7000億円にまでなっている。

■安定した職場だった建設業界だが…

 このように三重、四重の悪環境を、各社はどう乗り切ろうとしているのか。バブル経済崩壊後の1990年代には経営悪化組が続出したことから、淘汰を含む大再編が必至と指摘されたが、準大手・大手建設業界はここまで目立った動きもなくきているのが現状だ。「三井住友建設とフジタ」、「熊谷組と飛島建設」の統合・合併も見送られている。

 実は、表にした建設会社の従業員の平均年齢は40才を超え、平均勤続年数も総じて20年前後である。高収入でも平均年齢が30代そこそこだったり、平均勤続年数が10年に満たない場合と比べれば、基本的には終身雇用型の安定した職場であることを意味しているといってもいいのだ。しかしその職場も経営破綻をすれば…。

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(ビジネスリサーチ・ジャパン)

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