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2008年10月07日(火) 19時41分

熱血漢の益川、クールな小林=性格の「対照性」、独創理論生む−ノーベル賞時事通信

 数学にめっぽう強い熱血漢、実験に精通したクールな秀才タイプ。ノーベル物理学賞に決まった益川敏英さんと小林誠さんは、名古屋大理学部からの先輩と後輩だが、正反対の性格。この「対照性」が、物質の究極の世界を説明した「小林・益川理論」を生み出す原動力になった。宇宙誕生時には、同じ量だけ存在したと考えられる物質と反物質。電気のプラスとマイナス(C)、空間の左右(P)を変えただけなのに、どうして反物質だけが消えたのか。2人は京大助手時代の1972年5月、この「CP対称性の破れ」を理論的に説明する難問に挑み始めた。
 当時、クオークは3種類しか見つかっていなかったが、3種類ではCP対称性の破れが説明できない。益川さんは4種類で説明するモデルを無理やり作って主張したが、小林さんは冷静に実験データを持ち出し、「それは無理がある。駄目です」と否定した。
 熱い議論を戦わせた夜、益川さんは風呂に入りながらも考え続けた。「4個ではうまくいかない。6個という形しかないのではないか」と思い付き、「風呂からぱっと立ち上がったら、呪縛(じゅばく)が解けた」。その後2人は、2、3カ月で論文を書き上げた。小林さんは当時の益川さんについて、「体は小さいが、やたらと声が大きかった。数学にめっぽう強く、ユニークな論理を展開する人だった」と評する。一方、益川さんは「小林君は紳士で秀才タイプ。僕と対照的だったのが、かえって良かったのかもしれない」と振り返る。益川さんは父親に「モーターはなぜ動くの」「日食はどうして起きるの」と質問する科学少年だった。一方、小林さんは高校生のころ、新聞でよく目にした素粒子研究に「何となくあこがれていた」。ともに、日本の素粒子物理学の最先端だった名大理学部の坂田昌一教授(故人)の研究室に進み、才能を花開かせた。 

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