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2008年10月07日(火) 03時02分

「エクスパック」を悪用、振り込め被害が急増中読売新聞

 郵便事業会社の小型小包「エクスパック」を悪用した振り込め詐欺の被害が、今年1〜8月に少なくとも1193件に上り、昨年同期(729件)の1・6倍に増えたことが警察庁のまとめでわかった。

 被害者が誰とも対面しないよう郵便ポストから私設私書箱に送らせる手口で、警察が振り込め詐欺対策でATM(現金自動預け払い機)の警戒を強めた今春から急増している。郵便事業会社は防止策として、パックの表面に大きな注意書きを載せることを決めた。

 エクスパックは2003年10月から始まったサービス。専用封筒(縦34センチ、横25センチ)をポストに投函(とうかん)すれば、原則、翌日に指定先に配達される。料金は一律500円で、ホームページ上で配達状況を確認できることから、インターネットオークションで利用されることも多い。

 専用封筒は全国の郵便局のほか、一部のコンビニエンスストアでも販売している。料金の500円を払って専用封筒を購入すれば切手は不要で、本来は現金を送ることはできないが、品名に「書類」と書かれれば「現金が入っていても確認しようがない」(郵便事業会社)のが現状だ。

 振り込め詐欺に悪用されるケースが目立ち始めたのは昨年半ばごろからで、今年2月に127万円をだまし取られた静岡県袋井市の男性会社員(37)の場合、詐欺グループからエクスパックを購入するコンビニエンスストアまで指定されていた。

 同じく6月に50万円の被害にあった福島県西郷村の女性会社員(39)は、詐欺グループからエクスパックの品名の欄に「書類」と書くよう命じられたうえ、郵便局の窓口ではなく郵便ポストに投函するよう指示されていた。

 警視庁が先月、エクスパックを利用して振り込め詐欺を繰り返していたとして逮捕した詐欺グループ12人は「融資の前に保証金が必要」などと持ちかけ、他人名義の私設私書箱にエクスパックを送らせており、リーダーの男(29)は「これまでに1億円をだましとった」などと供述しているという。

 全国の警察は今年6月以降、振り込め詐欺の送金手段の8割近くを占めていたATMの警戒や不正口座の監視を強化しており、被害者がATMを使って送金するケースは2月の1661件に比べ、8月は780件まで減少した。

 警察庁は、ATMや銀行窓口での送金のほか、郵送などを使った手口も振り込め詐欺の一種としている。このうち、エクスパックを悪用した被害は、04年はわずか25件だったのに対し、昨年は1203件に上り、今年に入ってからは5月に198件、8月も231件を記録するなど同月末までに速報値で1193件に急増した。

 郵便事業会社は「詐欺行為に使用されることは残念」(渉外広報部)としている。専用封筒に小さく記載している注意文「現金を送ることはできません」の「現金」部分を、赤字で大きく目立たせるよう年内にもデザインを変更する。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20081007-OYT1T00043.htm