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2008年10月07日(火) 01時21分

北大使館が敷地内建物を民間に賃貸 ポーランド抗議も無視産経新聞

 北朝鮮の金正日総書記の異母弟が大使を務める在ポーランド北朝鮮大使館が、敷地内の建物を民間業者に賃貸しし、問題となっている。ポーランド外務省は「国内法や(外交官の外交特権などについて定める)ウィーン条約に違反する」と契約の即時解除を要求。北朝鮮大使館はこれを無視し続けている。(ワルシャワ 黒沢潤)

 問題となっているのは、ワルシャワ南部の閑静な住宅街にある同大使館の南側建物(総床面積約3400平方メートル)。この建物には、2006年初めごろから、ポーランドのメディア・グループ「ノバ」が入居し、現在は、事務所やスタジオとして活用されている。

 同メディア・グループは大使館に一定の賃料を支払っているとみられるが、具体的な金額は不明。ただ、「この地域の賃料は、1平方メートル当たり月額15ユーロ(約2100円)前後」(不動産関係者)といわれ、北朝鮮側の収入は月額で数万ユーロ(数百万円)とみられる。

 同大使館の動向に詳しい筋によれば、建物が貸し出されたのは、冷戦崩壊に伴って、多くの外交官を置く必要がなくなったからだ。「大使館は、外交官が居住する別棟の光熱費を捻出(ねんしゅつ)するのにも困っていたため、この建物を有効活用したいと考えたようだ」(地元記者)という。

 一方、同メディア・グループが建物を借りたのは、「北朝鮮が冷戦時代に核シェルターとして使うつもりだったのか、地下の部屋の壁の厚さが約1メートルもあり、傘下のレコード会社が録音作業をするのに最適な環境だった」=音楽関係者(31)=ためという。

 しかし、こうした異例の建物貸し出しに、ポーランド政府は反発を強めており、外務省報道課は「(外交目的以外の建物の使用を禁じた)ポーランドと北朝鮮間の1966年の協定、また、ウィーン条約にも違反する」と、契約解除を強く迫っている。

 北朝鮮側はこれに対し、「『敷地はポーランド政府が所有するが、建物は北朝鮮のものだ』と主張し、要求を無視したままだ」(前述の記者)という。

 北朝鮮が金銭を獲得する手段として、不要となった大使館の建物を民間に貸し出す例は、ベルリンにもある。ただ、ドイツ外務省側は、貸し出される建物が外交用の“本館”とは完全に切り離されて使われているほか、事前に外務省にも通告したとして、問題にしていない。

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