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2008年10月05日(日) 08時03分

【集う】第16回東京校歌祭(4日、東京都千代田区の日比谷公会堂)産経新聞

 高校時代の校歌を歌う表情は生き生きとして、若さにあふれていた。参加した19校約1000人の卒業生の多くがすでに60歳以上。卒業から40年以上がたっても、歌詞を見ることなく熱唱する姿が目立った。参加者は懐かしのメロディーに往時をしのび、甘酸っぱい青春時代に思いを巡らせた。

 校歌祭は校歌の歌詞に込められた大切な教えを後世に残し、各校の卒業生が交流する場をつくろうと、都内の旧制中学の同窓生が中心となり結成した東京校歌振興会が平成5年から毎年開催している。井上成一会長(82)は「今の教育には柱がない。その柱が校歌の中にある」と校歌を歌い継ぐ意義を語る。

 今回が初出場となる都立八王子工業高の同窓生は、参加者の中でも特に思い入れが強い。織物染色講習所として明治20年に創立した同校は、120年以上の歴史を誇る伝統校だが、昨年4月に都立第二商業高と統合され、都立八王子桑志高となった。校歌も変わり、22年3月に定時制の生徒が卒業すると、八王子工業の校歌は完全に歌われなくなってしまうからだ。

 この日は定時制の現役生4人とOBら約20人が校歌を合唱した。昭和19年の卒業生、高津文一さん(81)は「当時は音楽の授業もなく、体育祭の前に先輩から厳しく指導されながら教えてもらった。校歌を忘れるわけないよ」と笑顔で話す。今でも同窓生が集まると最後には校歌を歌うという。

 「こうした時期に再び校歌を歌えたことは非常にうれしい。また来年以降も参加したい」と広瀬武彦・同窓会会長(62)も感慨深げだ。

 学校が無くなっても、卒業生にとっての校歌は1つだけ。伝統の校歌は、来年以降もこの場所で歌い継がれていく。(蕎麦谷里志)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081005-00000074-san-soci