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2008年10月05日(日) 21時09分

金融危機、欧州統合に微妙な影響産経新聞

 【ベルリン=黒沢潤】欧州を襲う金融危機が欧州統合に微妙な影を落としている。一連の危機への対応をめぐって、ドイツやフランスなど欧州連合(EU)の主要国が激しく対立、EUが財政分野で各国に厳しく課してきた規制も事実上、棚上げされることが決まったからだ。

 パリで4日に行われた欧州4カ国(英独仏伊)の緊急首脳会議では、各国が「あらゆる措置」を講じることで一致した。しかし、経営危機に陥る欧州内の金融機関を救済する「銀行救済基金」創設を打ち出すには至らなかった。

 独メディアによれば、基金の創設構想は当初、オランダから持ち掛けられたEU議長国のフランスが先週ごろから、各国に実現を働き掛けてきた。だが、金融分野での主導権をEU本部に握られることを伝統的に嫌うドイツは、「救済基金の創設は良いことなどではない」(独財務省報道官)と反発した。この発言の背景には、救済基金が創設された場合、経済規模が欧州最大であるドイツが、多額の負担を強いられるなどの事情があったとみられる。

 市場重視派のブラウン首相が最近、市場介入容認へとかじを切った英国も、「納税者の税金を使うのだから、国家が個別に独自の解決策を取るべきだ」(英首相府報道官)と主張。フランスと、独英2カ国の温度差が浮き彫りとなった。この差は4カ国首脳会議でも容易に埋まらなかった。

 同会議では一方、欧州単一通貨ユーロを導入する各国の財政規律を定める「安定成長協定」の棚上げも事実上、容認された。同協定は、各国が財政赤字を国内総生産(GDP)の3%以下におさめると定めたものだ。経済危機を封じ込めるためとはいえ、各国の公的支出が今後、膨らみ続ける可能性は否定できず、EUが最終的に目指す経済政策の統一が足踏みする形となった。

 今回の経済・金融危機について、2日付の仏紙ルモンドは「危機にあるのは、金融機関という以上に欧州統合そのものだ」と指摘、欧州統合への影響を懸念する見方も浮上している。

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欧州4カ国首脳会議パリで開幕

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