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2008年10月05日(日) 19時00分

安保理非常任理事国選挙 イランの攻勢に日本は…産経新聞

 【ニューヨーク=長戸雅子】2009−10年を任期とする国連安全保障理事会の非常任理事国5カ国を選出する選挙が17日、国連総会で行われる。候補国は事前に各地域グループで調整され、総会の投票はそれを追認するというのが大方のケースだが、今回はアジアの1議席を日本とイランが争う展開になっている。

 これまで9回の非常任理事国の経験を持つ日本に対し、イランは安保理制裁下にある。日本の優位を指摘する声は多いが、半世紀ぶりの安保理入りを目指すイランも全力を結集して戦いを続けている。

 任期を2年とする非常任理事国(定数10)は毎年半数の5カ国が改選され、当選には、投票した国の3分の2の支持が必要だ。

 安保理活動をチェックしている非営利団体「セキュリティー・カウンシル・リポート」(本部・ニューヨーク)は、8月末の情勢分析で「安保理での豊富な経験をもつ国(日本)と、53年前に理事国経験がある国(イラン)の戦い」と表現し、「ほとんどの観測筋は日本の勝利を予測している」と指摘。

 選出の重要要素とされる「国際平和と安全の維持への貢献」についても、「日本は米国に次ぐ国連平和維持活動(PKO)の予算を拠出し、人道支援分野に要員を派遣している」のに対し、「イランは平和維持活動に一度も要員を出したことがない」と強調した。

 米国のハリルザド国連大使は「一方は国連にとって重要な役割を果たし、他方は安保理決議や人権問題の総会決議を無視する国。日本とイランを比べること自体が無意味」と突き放した。

 しかし、安保理制裁下での立候補というハンディを負っているにもかかわらず、イランの鼻息は荒い。各国首脳らが集まった総会の一般討論演説の機会などを利用して、反米国家やイスラム国家を中心に「日本は米国の傀儡(かいらい)。イランはイスラム国家の切り札的存在になる」とひそかに説いて回った。

 イスラム諸国の間では、安保理でイスラム圏を代表するメンバーが少なすぎるという不満があり、イランはイスラム諸国会議機構(OIC、57カ国・組織)に積極的に働きかけ、現在非常任理事国を務めるインドネシアやバーレーンから支持を引き出した。

 先月、イランのカザイ国連大使はイラン国営ラジオで、「(192国連加盟国のうち)140カ国は一度だけか、あるいは一度も安保理理事国になったことがない」と日本の多選を批判、「(安保理入りは)われわれの権利」と主張した。

 ある国連外交筋は「核開発活動について安保理内から“正当性”を主張したいのではないか」とイランの粘り腰を分析する。

 日本外交筋も「イランは手ごわい相手。最後の最後まで支持を得る努力を続けるだけ」と話している。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081005-00000526-san-int