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2008年10月04日(土) 12時00分

携帯、検索企業とPTA 安心なネットへ産“学”連携フジサンケイ ビジネスアイ

 NTTドコモなど携帯電話3社とヤフー、ミクシィなどネットサービス各社、日本PTA全国協議会などは共同で来年1月にも、インターネットの安全利用を促進するため「安心ネットづくり促進協議会」を発足させる。有害サイト規制法の成立を受けた民間による基準策定の取り組みと連動。ネットの安全性を維持するための啓発活動や調査、業務ガイドライン作成作業などを産業界と教育界双方の視点で推進する。

 4者のほかKDDI、ソフトバンクモバイル、楽天、マイクロソフト、全国高等学校PTA連合会などが発起人に名を連ねる。8日に開く総会には通信機器メーカーやインターネット接続事業者、教育関連企業、学識経験者なども参加する。今後、ネット関連企業など幅広い業種から参加企業を募り、来年1月をめどに協議会を設立する。

 協議会の活動は主に▽教師や保護者向けへの情報モラルに関するシンポジウムなどの啓発活動▽ネットの安全利用実現に向けた事業分野別の「自主憲章」の策定や、業務ガイドラインの作成▽国内外におけるネット上の違法有害情報に関する調査・研究−がある。協議会は、作業分野ごとに個別テーマの委員会を設置し、参加企業や団体から委員を選出してもらい、具体的な協議を進める。

 ネットの安全利用に向けたガイドライン策定などの取り組みは、これまでは各業界や企業別に行われるケースが多く、その内容も他の業界や一般利用者などに知られていないケースが少なくなかった。また、教育機関向けのセミナーなども、個別の企業色が強く、教育関係者の間では敬遠される傾向があり、十分な成果があがっていないと指摘されていた。

 民間企業によるネットの安全利用に向けた取り組みに対しては、6月には国会でネット関連事業者や携帯電話事業者に対し、有害情報を閲覧できないようにするフィルタリングソフトの普及促進などを求める法律が議員立法で成立しており、具体的な基準作りは民間に委託する方針が決まっている。

 さらに、総務省も7月にネット上の有害情報削除の強化や、第三者機関によるコンテンツへの評価基準作りなどを求める「安心ネットづくり促進プログラム」を年内に策定する方針を打ち出している。今回の取り組みは、これらの行政側の要請に、企業側が歩調を合わせる狙いがある。

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 【予報図】

 ■実効性ある活動方針が鍵

 インターネットを介して若年層が犯罪に巻き込まれるケースが後を絶たないなか、ネット業界に対しては、政界などからも厳しい規制策が提案されるなど、批判の対象になるケースが多かった。

 その意味で、今回の取り組みは幅広い業種が連携してネットの安全性維持に向けた活動を進める姿勢を強調することになり、規制強化の批判をかわす狙いがあるといえる。

 教育団体と共同で活動することで、企業側の取り組みへの社会的な認知や理解は、従来以上に高まると予想される。ただ、実際に子供がネット犯罪に巻き込まれるケースが減らなければ意味がない。

 実効ある活動方針を策定するのも容易ではない。「ビジネスに直接結びつかない違法情報対策などに、各社がどれだけ積極的に資金や人を提供ができるか。また各社のさまざまな意見や要望を、どのようにまとめられるかが、課題になる」(中村伊知哉・慶大教授)とみられている。(黒川信雄)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081003-00000005-fsi-ind