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2008年10月04日(土) 23時20分

台風上陸ゼロの「異変」に首相も心配? 産経新聞

 1年で台風が最も多く発生する8、9月が過ぎたが、今年はこれまで日本に1つも台風が上陸していない。9月まで「上陸ゼロ」だったのは平成12年以来8年ぶりだ。気象庁は、幅広い地域に脅威を与えた「ゲリラ豪雨」と呼ばれる集中豪雨や雷雨など、大荒れの天候をもたらした今夏の気象状況と共通する要因があったと指摘する。

 「気がついておられる方もいらっしゃると思いますが、台風はまだ一度も本土に上陸しておりません。こんなことは過去に例がない。(中略)異常だなあと感じていらっしゃる方も多いと思いますが…」

 麻生太郎首相は新閣僚を発表した9月24日夜の会見で、斉藤鉄夫環境相を紹介する際、地球の異常を示す事例として上陸ゼロに言及した。

 「過去に例がない」とするのは首相の誤解だが、9月が終わった時点で上陸数がゼロだったのは過去50年間で平成12年、昭和62年、61年、59年の4回しかなく、「珍事」とはいえそうだ。4回のうち62年は10月に台風が上陸したが、残りの3年は通年での上陸数もゼロに終わっている。

 夏の台風は通常、日本の南海上に勢力を広げる「太平洋高気圧」の西側のふちを回る形で北上する。ある程度の緯度まで上ってくると、西から東方向に吹く偏西風に乗って日本列島に近づく。

 だが、今年は太平洋高気圧が例年より西方向に長く伸びる変則的な気圧配置になっていた。同庁気候情報課は「台風は高気圧のふちを回るのに時間がかかり、北上をブロックされて偏西風に乗らずに西に向かう形になった。このため、中国や香港で大きな被害を出した台風もあった」と分析している。

 さらに、平年と比べて今年は偏西風のルートが南北方向に大きく蛇行したため、台風が日本方面に向かう風の流れに乗りづらい状況だったことも指摘されている。9月9日に発生した台風13号が日本の太平洋側をゆっくりと進んだのも、風の影響をあまり受けなかったことが一因だ。

 偏西風の蛇行は、「8月末豪雨」(26〜31日)をはじめとする今夏の異常気象にも関連しているとされる。同庁の異常気象分析検討会は、蛇行により、寒気が日本上空に停滞しやすい状況になり、大気の状態が不安定になったなどと指摘している。

 ただ、過去10年間をみると、台風は10月にも計29個が発生し、うち4個が上陸している。油断するのはまだ早そうだ。

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