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2008年10月01日(水) 16時40分

金融安定化法案が否決、そして世界恐慌へMONEYzine

 いつ倒産してしまうか分からない金融機関に対して資金を貸したり預けたりする人はいない。米国では、実際に大きすぎて潰れないと思われていたリーマン・ブラザーズが倒産し、リーマンブラザーズ相手の取引がすべて停止してしまいまった。

 米国の住宅金融公社フレディマックとファニーメイは国有化されたが、この2社に出資していた株主は出資金をほぼすべて失ってしまったし、また米国大手保険会社AIGも国の管理下に置かれ、同様に多くの出資金が紙きれになってしまった。

 その他にも米国では地銀の破綻が相次ぎ、ペイオフが発動したため大口預金者が預金を失うという事態になっている。貸すのも預けるのも危ないためお金を持っている人は現金を抱え込み、現金が足りない人が倒産していくという状況になっているのだ。

●投資家の体力低下

「価格が安ければ買う人がいる」という市場主義の原理がゆらいでいる。年金基金、政府系ファンド、ヘッジファンドなどの主要な投資家すべてが損失を蒙り、新規の投資に慎重になっている。特にヘッジファンドなどの他人資金での短期投資は、株式の空売りや資金回収という形での取引を通じて、市場の変動を増幅させているように感じる。

●世界的なドル大循環の停止

 米ドルは、米国で使用され、資源国やアジア諸国に代金として支払われ、その資源国やアジア諸国はもらったドルを米国市場へ投資するといういわば「ドル大循環」を形成していました。米国市場が混乱している現在、この「ドル大循環」が停止している。

 資源国やアジア諸国は手持ちのドルをドル資産、とりわけ米ドル建ての住宅ローン債券や米国企業社債に投資し、米国での住宅ローンや企業の資金繰りに貢献してきた。ところが、その住宅ローン市場が崩壊し企業の業績が悪化しているため、資源国やアジア諸国はこれらへの投資を停止している。この結果、米国住宅ローン市場や社債市場で決定的な資金不足が生じている。

 米国でのドル不足は世界中からのドル回収を促す。特に今まで投資を受ける側であった新興国から資金が流出している。その影響が、株価や通貨の下落という形で現れているのではないだろうか。

■そして影響は実態経済へ

 一時的であるといわれていたサブプライムローン問題だが、世界の金融システムを止めるという形で世界の実体経済へ影響を与えている。

●金融機関の貸し出しの停滞

 金融機関の体力の低下は、貸し出しを減少させる。貸し出しの減少は経済活動を縮小させる。住宅価格や商業用不動産の価格は下落する。そしてその価格の下落は金融機関の体力をさらに低下させ、消費者の購買力を奪う。

 米国、英国、中国など世界中で不動産の価格が下落している。消費者の購買力が低下し、企業活動が停滞している。米国では本格的に金融機関の貸し出しが鈍化してきた。実態経済の鈍化はこれから本格化し、回復するのは当面先のことになるだろう。

●日本への影響:外需頼み

 世界経済の減速は輸出主導型の日本経済に大きな影響を与えると予想される。特に貿易相手国1位の中国と2位の米国の経済成長の影響は大きい。

 これまで日本では、サブプライムローン問題の影響は不動産業界を中心に議論されてきた。しかし、これからは引き続き混乱している不動産業界や建設業界に加えて、輸出産業や小売産業の減速を注視していく必要がある。


(課長 今調査役)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081001-00000000-sh_mon-bus_all