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2008年10月01日(水) 14時00分

iPhoneと松下『タフブック』が支給品、ワシントンDCの警察官WIRED VISION

[標的を一時的に麻痺させる]テーザー銃や常用の武器を携帯するワシントンDCの警察官たちに、今度は米Apple社のスマートフォン『iPhone』が支給される。

ワシントンDCでは、事故対応や犯罪報告手続きの簡易化を図るため、市民の安全を守る警察官にiPhoneと、松下電器産業(パナソニック)のノートパソコン『TOUGHBOOK』(タフブック)を支給する取り組みが進められている。これは、当局の技術担当の最高責任者であるVivek Kundra氏の主導によるもので、他の地域に先駆けた動きだ。

Kundra氏によると、警察官は、支給されたiPhoneを利用して交通状況をチェックしたり、巡回ルートを追跡したり、事故への対応を改善したりできるという。

「われわれは、公安のニーズに応じた総合的な移行を生み出そうと試みている。無線や単純なデータ機器を使う従来の方式を、リアルタイムで双方向の情報交換を促進できるものに変える、という考えだ」とKundra氏は説明する。

Kundra氏は、韓国のSamsung Electronics社、フィンランドのNokia社、『BlackBerry』を販売する加Research In Motion社(RIM)の端末をテストした後、iPhoneに絞ったという。

「Apple社はこのユーザー・インターフェースで素晴らしい仕事をした。ブラウザーのアプリケーションとアプリケーションの統合が非常にシンプルなので、われわれが行なおうとしている変更管理の面で、導入がかなり容易になる」とKundra氏。

ワシントンDCの地方自治体は、Apple社が法人を対象としたベータ版プログラムを開始して以来、iPhoneを試用してきた。現在は、公安、教育、保健医療の分野で約75台のiPhoneが使用されている。

Kundra氏は、一般消費者向けの技術のほうが、法人向けの高価なソリューションより使いやすくてコストも低いので、公的機関に導入するのに向いていることに気づいたという。

「ワシントンDCを初めて歩いた時、平均的な警察官や教員よりも私のほうが性能の高いコンピューターを持っていることに気付いた。われわれはこれまで、何百万ドルも費用がかかる大規模なプロジェクトに投資してきたが、プロジェクトの目的を果たせなかった。だが、一般消費者向けの製品に目を向けるなら、iPhoneであれ、『Google Apps』であれ、十分に機能し、比較的少ない費用で済む」とKundra氏。

同じ理由から、ワシントンDCを巡回する多くの警察官は、パナソニックの耐久性の高いノートパソコン、TOUGHBOOKを支給されている。

TOUGHBOOKの導入は約8ヵ月前に始まり、警察に配備されている台数はすでに目標台数の800台に迫っている。Kundra氏によると、今後は消防士と救急医療班にも200台支給する予定だという。

この取り組みは、「デジタル警察部隊」を創設する計画の一環だ、とKundra氏は語る。

TOUGHBOOKが導入される以前、大半のパトロール用車両には、ナンバープレートや犯罪データベースを照合するくらいしか機能がない携帯データ端末が搭載されていた。

「報告書を書く場合、警察官は4枚複写のカーボン紙に記入しなければならず、作業に45分ほど時間がかかった」とKundra氏。

報告手続きにももっぱら文書が使用されていた。事故の報告書の場合、ワシントンDC自治体の自動車局、裁判所、警察本部に各1部ずつ回され、それぞれ個別にデータベースにキー入力したり、スキャンしたりする必要があった。

TOUGHBOOKを利用すれば、巡回中の警察官はすべての情報をコンピューター上に入力できる。「以前は一方的に情報検索するだけだったが、TOUGHBOOKのおかげで双方向の情報交換が可能になりつつある」とKundra氏は語る。

これまでに導入されたTOUGHBOOKは、700MHzの無線周波数帯を利用するワシントンDCの公安用ネットワークを通じて接続されている。ネットワークの最大下り速度は1Mbpsで、最大上り速度は約700Kbpsだ。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081001-00000001-wvn-sci