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2008年09月30日(火) 16時39分

自衛隊トップが佐藤正久参院議員に政治献金/自衛隊法違反の可能性もMyNewsJapan

 昨年7月の参議院選挙で初当選した元陸上自衛隊の1佐・佐藤正久参議院議員(自民)の政治資金管理団体に、田母神俊雄・航空幕僚長や折木良一・陸上幕僚長ら制服組トップら7人の現職幹部自衛官が政治献金をしていたことがわかった。自衛隊法では隊員の「政治的行為」を厳しく制限しているはずだが、まるでおかまいなし。政界が混乱する中、約4兆8000億円もの税金をつぎ込む国内最大の役所・防衛省の「政治的中立」は崩壊寸前だ。

 佐藤正久参議院議員が代表を務める資金管理団体「さとう正久を支える会」の2007年分収支報告書によれば、参院選直前の昨年6月7日、田母神空幕長が「支える会」に対して10万円を献金。翌日の6月8日には、陸上幕僚長の折木良一氏も8万円を献金していた。

 また報告書には、帯広地方協力本部長の1等陸佐、陸上自衛隊多賀城駐屯地司令の1等陸佐、陸上自衛隊衛生学校教育部長の1等陸佐、海上自衛隊佐世保病院院長の1等海佐、海上自衛隊函館基地司令の1等海佐とみられる5人の現役高級幹部の名前も記載されており、それぞれ昨年5月31日から6月19日にかけて1万円から10万円を献金している。

 政治献金を行った現役幹部は計7人で総額は46万円。献金はすべて個人名で行われており、職業欄には「公務員」と書かれていた。7人のうち4人の住所は、自衛隊官舎だった。

 自衛隊法61条では、「隊員は、政党又は政令で定める政治的目的のために、寄附金その他の利益を求め、若しくは受領し、又は何らかの方法をもつてするを問わず、これらの行為に関与し、あるいは選挙権の行使を除くほか、政令で定める政治的行為をしてはならない」として、政治的行為を厳しく制限。

 自衛隊法施行法87条でも、「政治的目的のために官職・職権その他公私の影響力を利用すること」や、政治的目的を持つなんらかの行為をめぐって隊員の地位に影響を与えるような「政治的行為」を禁止している。

 田母神航空幕僚長をはじめ、今回明らかになった現職自衛官の個人献金者はすべて部隊の長とみられ、人事権を持つ立場にある。個人の資格で行った献金だとしても、部下になんらかの政治的影響を与えた可能性は高い。

 『文民統制』(岩波書店)などの著書がある山口大学人文学部の纐纈厚教授(政治学)は次のように問題視する。

 「自衛隊で高位の地位にある者、政治的に中立をキープしなきゃいけない立場の人たちが政治献金をするなど、これまでなかった。そういうことをやらないというのが、“国防”の第一線に立っている自衛隊の大前提だった。現役幹部の政治献金などあり得なかった。その大前提が突き崩されたという感じは否めない」

 収支報告書によれば、「さとう正久を支える会」が2007年度に得た収入は約1億3000万円。うち個人献金は4000万円あまりを占める。政治資金規正法の規定により5万円以下の個人献金は記載する義務がなく、4000万円の献金のうち1000万円分、約90人についてのみ氏名などの記載がなされた。

 取材に対して防衛省は「現在確認している」と話している。


(三宅勝久)


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