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2008年09月30日(火) 00時36分

<米ワコビア>買収の背景、取り付け騒ぎへの当局の危機感毎日新聞

 【ワシントン斉藤信宏】米金融大手シティグループが29日、経営危機に陥っていた金融大手ワコビアの銀行業務買い取りを決めた背景には、金融機関の連鎖破綻(はたん)で取り付け騒ぎが発生するのを恐れた米金融当局の強い危機感がある。

 米金融市場では9月に入り、証券大手リーマン・ブラザーズの経営破綻を契機に金融システム危機が発生。金融機関の経営危機が相次いで表面化する事態に発展している。危機は欧州にも波及しており、世界金融恐慌の恐れも指摘されている。事態の悪化を受けて、米連邦預金保険公社(FDIC)は金融機関の身売り仲介に積極関与。今回の買収も、FDICの強い意向が働いたことは明らかだ。ポールソン米財務長官はFDICの発表直後に「ワコビアが破綻すれば、金融システムに危機が生じただろう」と声明を発表、シティによる事業買い取りを歓迎。救済買収への一定の関与を印象付けた。

 FDICは「ワコビアは破綻していない」と明言しているが、シティによる買収後のワコビアは、証券子会社と資産運用子会社を経営するだけの中小金融機関にすぎなくなる。銀行業務については「放置すれば数日で破綻した」(米エコノミスト)と言われており、事実上の破綻処理に等しく、金融システム危機が一段と深刻化していることを裏付ける結果となった。

 シティの経営状態も決して盤石とは言えない。低所得者向け高金利住宅ローン(サブプライムローン)問題の影響で、今年6月までの1年間での累積損失は582億ドル(約6兆2000億円)にまで膨らみ、来月16日に発表予定の08年7〜9月期決算でも、既に追加損失の計上が確実な情勢となっている。米政府と議会が制定を急いでいる金融安定化法案の適用第1号になる可能性もあり、金融市場の行方次第では経営状態の一段の悪化につながる恐れもある。

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