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2008年09月29日(月) 08時00分

小泉氏引退 チルドレンどう戦う産経新聞

 ■佐藤ゆかり氏「改革堅持」/片山さつき氏「党の印象に影響」

 麻生政権発足直後の政界を揺るがした小泉純一郎元首相(神奈川11区)の電撃引退表明。近づく解散総選挙を前に、平成17年の郵政選挙で大量当選した「小泉チルドレン」にとっても大きな衝撃となった。小泉劇場の終幕、どう戦う。

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 〈東京5区〉「小泉元首相の勇退後はわれわれ若手が党内で改革路線を堅持、推進していく責任がある」

 自民現職、佐藤ゆかり氏は27日正午前、東急・二子玉川駅前の街頭演説後、産経新聞などの取材に答え、小泉路線継承者としての立場を明確にしてみせた。

 ただ、党内は構造改革路線の見直しが進む。郵政民営化に反対した野田聖子氏への“刺客”として岐阜1区から出馬したのは3年前。小泉氏の首相退任後は流れが変わり、元首相が「帰る場所はない」と切り捨てた造反組は復党。佐藤氏は国替え、新たな選挙区で戦うことになった。

 立場の近さを強調し、元首相の応援にも大きな期待を寄せるが、「だれかに頼っては選挙に勝てない」。毎週土曜日に同駅と東急・自由が丘駅前で街頭演説を続け、政策の浸透を図る。

 迎え撃つのは民主元職、手塚仁雄氏。元首相引退も「関係ない」と言い切る。「元首相が応援に来ても佐藤氏のメディアの露出が多くても、5区での知名度では負けていない。今回の選挙は政権選択の意味合いが強い」。前回落選後、連日、駅前に立ち、住宅地を歩いて政策を訴えた自信が垣間見える。

 〈静岡7区〉“刺客”、造反組、民主党の三つどもえ。前回注目された構図での再戦となる選挙区。

 自民現職、片山さつき氏は「改革のシンボルなので、党のイメージに与える影響は少なくない」と、元首相引退の影響を懸念する。「元総理というバリュー(価値)は変わらない。フリーな立場となるので、空いた時間を借りてご指導を仰ぎたい」とも。

 郵政民営化に反対した無所属元職、城内実氏は「格差社会を生んだ1つの時代が終わった。(当時は)波に逆らったかもしれないが、間違っていなかった。選挙にも追い風になる」と強調する。

 両者の間に割って入る民主新人、斉木武志氏は「小泉改革はセーフティーネットを外し、国民に負担を強いるものだった。次男に跡を継がせるのは、旧態依然とした自民党そのままだ」と批判した。

 〈千葉4区〉元首相引退に「ショックだ」と驚きを隠さない自民現職、藤田幹雄氏。前回、縁もゆかりもない選挙区で、知名度の高い民主現職、野田佳彦氏に肉薄、比例代表で復活当選した。

 「チルドレンと呼ばれるのは光栄」というだけに、後ろ盾不在の不安は小さくないはずだが、船橋市の事務所では「(元首相は)政治活動は続けると話しているので今後も支援してほしい」と話す。「小泉改革」の看板は下ろさないという。

 野田氏の陣営は「政権交代を訴えて戦うだけ。(元首相が)引退しようがしまいが、こちらは不変。いつ解散してもいいよう準備を進める」と受けて立つ構えだ。

 〈埼玉11区〉「マイナスはない。こちらは選挙まで活動をやり抜くだけ」。前回、郵政民営化に反対し自民党公認を得られず、“刺客”に敗れた無所属元職、小泉龍司氏。陣営は元首相引退を冷静に受け止めた。

 前回、元首相に直接要請され“刺客”として送り込まれた自民現職、新井悦二氏の陣営は「余力があるのに残念」と驚きを隠さない。「国民的人気があり、人が集まる。引退後も選挙区を回るのであれば、ぜひ来てほしい」と期待を寄せる。

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 ≪後ろ盾ない危機感 陣営引き締める≫

 選挙プランナー・三浦博史さんの話「麻生太郎首相の登場で構造改革路線を否定される印象がある。小泉元首相引退の影響はあるだろう。“小泉チルドレン”は後ろ盾を失うわけだから確実に影響を受ける。しかし、危機感は逆に陣営を引き締めるので、一概に不利だとはいえない。危機感をどのように持つかは候補者次第だ。今回は引退する議員が多い。自民党だけでなく、民主党でも、いくつかの選挙区で顔ぶれが変わる可能性はある。時間は本当にないが、候補者の差し替えはあるだろう」

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 ■前回圧勝の“おひざもと”不安と平静

 〈神奈川〉前回、小泉旋風がはっきりと結果に出たのは、おひざもとの神奈川県だ。18選挙区で民主党が全敗。ベテラン議員が自民党新人に敗れた選挙区も多く、小選挙区は自民16、公明1、無所属1という結果に終わった。

 前回初当選した自民現職の議員らは「神奈川にとってはシンボルだった」(4区・林潤氏)、「有権者が小泉改革が終わり、昔の自民党に戻るんじゃないかと思われてしまうかもという不安はある」(8区・福田峰之氏)と、心情を吐露する。

 ただ、「影響はないと思う。本人が影響がある場所には出ないという立ち位置をとってきた」(5区・坂井学氏)、「規定の路線。影響は大きくないだろう」(9区・山内康一氏)と、冷静に対応する議員も。

 雪辱を期す民主党の笠浩史県連代表は「引退したからいい風が吹くとかではないが、これを政権を変えようという期待感に変えていきたい」と、気合を入れる。ただ、11区は、早々に出馬表明した小泉元首相の次男、進次郎氏に対し、民主党は候補者擁立が遅れている。

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【用語解説】小泉チルドレン

 平成17年9月の総選挙は「郵政民営化」をテーマにした小泉純一郎首相(当時)の戦略とパフォーマンスが当たり、自民党が296人を当選させる歴史的勝利を収めた。うち新人は83人が当選。郵政造反組を公認せず刺客として送り込まれた候補者も多かった。新人議員らは「83会」を結成。当選後は奔放な言動やファッション、転身前との落差などが注目され、ワイドショーで連日紹介された。

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