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2008年09月29日(月) 18時41分

【麻生首相所信表明】とてつもない楽観論 「選挙」にかすむ国家のありよう産経新聞

 麻生太郎首相は29日の所信表明演説で、「民主党」という言葉を12回持ち出し同党への攻撃姿勢を前面に打ち出した。民主党の小沢一郎代表に対する代表質問といえる異例のスタイルをとり、迫る次期衆院選を強く意識したことは言うまでもないだろう。ただ半面、危殆(きたい)に瀕しつつある日本をどういう方向に導いていくのか、指導者としての思いや決意がかすんでしまったことは否定できない。

■写真で見る■ 所信表明演説の前に「国民にお詫びする」と頭を下げる麻生太郎・首相

 麻生首相は演説で、「日本は強く、明るくなければならない」「日本人の力を信じて疑わない」などと連呼し、日本全体に覆う暗雲を吹き飛ばすことに努めた。「明るさ」が持ち前とされる首相の真骨頂ではあるが、各論となると「とてつもない楽観論」(自民党中堅)でちりばめられた。

 首相は「日本経済は全治3年」として景気対策を最優先し、財政再建や構造改革は当面先送りする考えをにじませた。しかし、景気対策への具体的な処方箋(せん)や道筋は示せず、小泉純一郎元首相以降、歴代首相が触れてきた消費税増税の必要性にも口を閉ざした。

 民主党が選挙をにらんで与党への格好の攻撃材料としている社会保障制度や格差是正問題も主要項目から外した。選挙へのマイナス要因となる材料は封印しておきたいとの思惑が透けてみえてくる。

 こうした中で首相は民主党への「逆質問」を連発した。外交について「日米同盟の強化」を真っ先の課題に挙げ、国連至上主義に走る小沢氏の姿勢をただしたのは当然のことだ。

 だが、民主党の政権担当能力の欠如をあぶりだすことに腐心するあまり、「自身の国家ビジョンを具体的に国民に訴えるという首相の責任がなおざりになり、民主党の方ばかり向いている」(自民党ベテラン議員)との声も聞かれる。

 自民党総裁選に挑戦すること4度目で射止めた首相の座だ。民主党を攻撃するのもいい。だが演説で「宰相・麻生」はいったい日本をどうしたいのか、国民に伝わったとは言いがたい。衆院選に向け「太郎VS一郎」の演出にこだわり続ければ、所信表明演説で民主党を「政局第一」と指弾した言葉が、国民から首相自身に浴びせられるだろう。

 民主党幹部はほくそえむ。

 「首相は決して攻めているのではなく、守りに入っている。背中を膨らましているネコにみえてくる」(高木桂一)

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響くか「太郎節」 麻生首相、29日に所信表明演説

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