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2008年09月29日(月) 19時12分

【解説】「5年がかりでグーグルに勝つ」——バルマーCEOが描くマイクロソフトの中長期戦略Computerworld.jp

 「Microsoftは、検索事業でGoogleの“本当のライバル”になりうる唯一の企業だろう」——9月25日、米国MicrosoftのCEO、スティーブ・バルマー(Steve Ballmer)氏は公の場でそう語った。同氏は、この分野におけるMicrosoftの“本気度”を強調し、あわせてクラウド・コンピューティングや仮想化、スマートフォンといった注目市場における同社の勝算を説明した。

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■「営業利益に影響を与えたとしても、検索市場での地位強化をめざす」

 25日に米国シリコンバレーの団体Churchill Clubが主催したディナー・イベントのステージに立ったバルマー氏は、「われわれは、検索のビジネス・モデルを根本的に再構築することに取り組まなければならない」と述べた。「市場を無理やり攻略しようとしても、うまくいかない。ユーザーのためにこの分野を再定義することで、初めて大きな前進を遂げることができる」(同氏)

 検索市場でGoogleに対抗しうるようなビジネス・モデルを構築するには、相当な時間がかかる。「5年がかりの仕事だ」とバルマー氏。だが、Microsoftはその挑戦に多大な資金を投入する構えだ。同氏によると、Microsoftは先ごろ同社の株主に、「今後数年間、営業利益全体が5〜10%減少することも覚悟のうえで、検索市場での地位強化をめざしていく方針を伝えたという。

 検索事業への注力は同社が以前から強調していたことであり、この日のバルマー氏の講演で、特に初めて判明した情報というものは1つを除きなかった。その1つとは、10月に同社が開催するソフトウェア開発者向けの年次コンファレンス「Professional Developer Conference(PDC)2008」で、ひそかに進行中のクラウド・コンピューティング・プロジェクト「Project Red Dog」の説明が行われるという情報だ。

 Project Red Dogは、米国Amazon.comのクラウド・コンピューティング・サービス「Amazon EC2(Elastic Compute Cloud)」になぞらえて「EC2 for Windows」と呼ばれている、とバルマー氏に質問したベンチャー・キャピタリストのアン・ウィンブラッド(Ann Winblad)氏は話した。ウィンブラッド氏はバルマー氏を目の前にして、Red Dogの詳しい説明を求めたが、バルマー氏は、6週間後のPDCまで待ってほしいとだけ答えた。

■仮想化市場やスマートフォン市場でも強気の姿勢

 この日の講演では、さまざまな質問がバルマー氏になされた。サーバ仮想化についての質問に対しては、Microsoftは統合された管理ツールとすぐれた品質のソフトウェアを安価に提供し、この技術の「民主化」を図っているところだと説明した。「サーバの5%ではなく80%が仮想化されることを目指すのであれば、仮想化ソフトの価格をサーバの3倍に設定するのは賢明ではない」と述べ、製品価格の高さが批判されている仮想化最大手のVMwareを“口撃”した。

 また、スマートフォンについての質問に対してバルマー氏は、フィンランドのNokia、カナダのResearch in Motion(RIM)、Appleといったこの市場の主要プレーヤーは、今後5年の間に市場が拡大する中で競争に敗れるだろうとの予測を示した。これらの企業はプロプライエタリなハードウェアを設計しており、ハードウェアとソフトウェアの結びつきが強いというのがその根拠だ。例えばNokiaは現在、スマートフォン市場で約30%のトップ・シェアを占めているが、バルマー氏は、「それ以上のシェアを獲得するには、ハードウェアとソフトウェアのプラットフォームを切り離さなければならない」と指摘した。

 言い換えれば、バルマー氏は、Microsoftのデスクトップ市場制覇に貢献した戦略(ハードウェア・ベンダーへのOSのライセンス提供)が、スマートフォン市場でも同社を勝利に導くと考えている。同氏は、長期的には、先ごろオープンソース化されたSymbian OS、モバイル版Linux、Windows Mobileの三つどもえの競争になると見ているという。

 一方、Appleに関しては、今後もPC市場でシェアを大きく伸ばしたり、エンタープライズ分野で脅威になることはないだろう、というのがバルマー氏の見解だ。「Appleはソフトウェアを他社にライセンスしないからだ。Appleはよい企業だ。それは間違いない。しかし、彼らはハードウェアとソフトウェアをセットにして提供することにこだわっている。他社にハードウェア製造を任せることは眼中にない」(バルマー氏)

 「Appleの脅威はないと言っているのではない」とバルマー氏。しかし、MicrosoftとWindowsパートナー・ベンダーが今後もみずからの仕事を的確にこなしていけば、Appleがエンタープライズ市場に食い込んでくることは考えられない、と同氏は語った。

(James Niccolai/IDG News Serviceサンフランシスコ支局)

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