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2008年09月28日(日) 22時32分

<薬害C型肝炎>無念の死を支えに…東京訴訟原告の浅倉さん毎日新聞

 東京訴訟原告の浅倉美津子さんにとって、1月の国との和解基本合意後が、本当の「肝炎との闘い」だった。

 4月、原告たちの手で実現させた医療費助成制度を使い、インターフェロン治療を始めた。副作用は想像以上だった。連日の高熱、テレビのリモコンさえ動かせない脱力感。頭を洗うと、抜けた髪が指にまとわりついた。

 そのころ、患者が切望した肝炎対策基本法は与野党協議の決裂で成立が遠のき、製薬企業との和解交渉も難航していた。浅倉さんは帽子で髪を隠し、重い体を引きずって国会や国の会議を傍聴し、機会を見つけては対策の拡充を訴えた。

 原動力になったのは、昨年末の国との激しい攻防の経験だ。どこからあのエネルギーが出たのか、今も不思議に思う。だが「正しいと信じて声を出し続ければ、必ず伝わる」と実感した。「役人や企業のウソや言い逃れを、私たちはたくさん見てきた。もう泣き寝入りはしない」。内向的だった自分が、少し強くなれたと思う。

 9カ月前に57歳になった。5年前、判決前に亡くなった「東京原告13番」の女性と同じ年だ。死の間際に病床で撮ったビデオの中で「命を返してほしい。子供たちや親しい人たちと、笑い転げていたい」と訴えた彼女の無念さが、2人の息子の母として痛いほど分かる。「彼女の死を無駄にできない」との思いが、常にある。

 治療は今月24日に終わった。ウイルスが消え、20年間苦しめられた肝炎からやっと解放されたが、肝炎問題から生涯、目をそらすつもりはない。28日、田辺三菱製薬幹部に語りかけた。「企業の皆さんも力を合わせて、未来のために過去の過ちを償ってください。お願いします」【清水健二】

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