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2008年09月27日(土) 08時42分

大和都市管財訴訟「国は責任認め償って」高齢の原告、今も傷深く産経新聞

 突然の経営破綻(はたん)から7年半。「大和都市管財」グループの巨額詐欺事件をめぐる国家賠償請求訴訟の控訴審は26日、救済範囲を拡大する画期的な原告勝訴判決となった。1審よりも国の過失責任を強く断罪した判断に、原告側は「消費者の尊厳が司法の場で示された」と喜び、「国はもう上告しないでほしい」と訴えた。ただ、15億円余りという賠償額は被害の一部に過ぎず、高齢者が大部分を占める被害者の中には、いまなお心に深い傷を負った人も多い。

 閉廷後、原告らは弁護団とともに大阪司法記者クラブで記者会見した。

 老後の蓄えのために夫婦で千数百万円分の抵当証券を購入、1審で敗訴した東京都足立区の畔上徹太さん(77)は逆転勝訴となり、晴れやかな表情だった。「長い裁判の途中で亡くなった人もいる。判決を受けて国は速やかに(賠償を)実施してほしい」と話した。また、兵庫県宝塚市の石黒杉雄さんも感無量で「私ももう89歳。早く損害を補償してくれるよう国にお願いしたい」と訴えた。

 全国の約1万7000人から約1100億円を集めた大和都市管財。大阪、東京、名古屋の各被害者弁護団と委任契約を結んだのは約6000人(被害額約600億円)で、訴訟にこぎつけたのはわずか721人だった。国の過失を問う訴訟方針を打ち立て、原告数を絞り込んだためだ。

 被害者の会は破綻から半年後の平成13年10月に発足した。多くは高齢者。退職金や貯金を少しでも有利に運用しようと抵当証券などの金融商品を購入したが、何十年にもわたってためたお金を一夜にして失った。失意のまま亡くなった高齢者や自殺した人もいる。

 「十分な情報がない中で『国の許可』との言葉に安心して購入した。しかし、もうけようと思ったんだからリスクを伴うのは当たり前と言われ、多くの人が今も心に深い傷を負っている」

 会の世話人代表を務める大阪府吹田市の松木正さん(53)は被害者の思いを代弁する。

 松木さん自身も1審で原告になり、敗訴した。9年に亡くなった父が、老後のためにとコツコツためた資金で抵当証券を購入し、破綻で受けた被害額は約3000万円にのぼった。

 清算しようとしたが、担当者は「抵当証券は国の認可もあり、しっかりしたものです。当社は国の許可をクリアした会社です」と、もっともらしい理由をつけて解約に応じなかった。

 「身を削って真面目に一生懸命に生きて蓄えてきた、まさに『命金』。おやじが生きていれば、怒り心頭ではすまないだろう」。松木さんは1審の法廷でそう陳述した。

 敗訴後は控訴せず、訴訟の意義を原告に説き、控訴審を支えてきた。この日も法廷で勝訴判決を迎えた。

 松木さんはいう。「裁判で勝っても戻ってくるお金はほんの一部だ。破綻からもう7年以上たっている。国は責任を認め、上告せずに決着させてほしい」

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