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2008年09月27日(土) 23時35分

【ロス疑惑】三浦容疑者「1勝1敗」今後どうなる?産経新聞

 【ロサンゼルス=松尾理也】ロス疑惑銃撃事件で逮捕され、米自治領サイパン島で拘置中の元会社社長、三浦和義容疑者(61)=日本で無罪確定=が逮捕状の無効を申し立てた裁判で、ロサンゼルス郡地裁のバンシックレン裁判官は26日、殺人罪での逮捕を「日本で無罪判決を受けており、同じ罪で2度裁かれることを禁じる一事不再理規定に反する」として無効とする一方、共謀罪での訴追は有効とする決定を下した。「入り口」段階の法律論争をめぐって半年以上も足踏みを続けてきた事件の審理がいよいよ動き出すか、注目される。

 ▼終身刑も

 「殺人罪での訴追が認められなかったことは喜ばしい。共謀罪が認められたことには失望している」。三浦容疑者の弁護人、ゲラゴス氏の表情は硬かった。一方、逮捕直後は「1カ月もすれば移送は完了する」と楽観していながら、ゲラゴス氏の攻撃に防戦一方だった検察側は安堵の表情を浮かべた。

 カリフォルニア州刑法では殺人での共謀罪は禁固25年から終身刑と重い。検察関係者は「いたずらに殺人罪での訴追にこだわって上訴するよりも、決定をはずみに速やかな移送にこぎつけ、本裁判の開始を目指すのではないか」と話す。

 サイパンの弁護団は現在、三浦容疑者の移送を阻止する構えをとっている。サイパン自治領最高裁がゴーサインを出し、移送間近かと思われたが、弁護側は新たにサイパンにある連邦地裁に人身保護請求を申し立てた。現在は再び移送が停止されている状態だ。

 しかし、ゲラゴス氏はこの日、「ロスに舞台を移し、その上で新たな訴えを起こすのもひとつの選択肢だ」と、方針転換に含みを残した。

 ▼まだまだ時間?

 背景には、共謀罪への「一事不再理」適用が、今回の決定で完全に否定されたわけではない、との読みがある。バンシックレン裁判官は「(共謀罪は日本に存在せず、今回の米国での訴追が日米で二重に裁かれることにはつながらない、とする)検察側の主張に対し、弁護側は有効な反論を示せなかった」と述べるにとどめ、今後に議論の余地を残した。

 移送が実現すれば、本来なら続いて、米国での起訴手続きに当たる予備審問が始まる。だが、ゲラゴス氏はその前に共謀罪に焦点を絞った訴えを起こし、本裁判に持ち込まずして三浦容疑者の釈放を目指す方針とみられる。

 歩調を合わせるかのように、日本での裁判の際に弁護人を務めた弘中惇一郎弁護士も「ロス、サイパンのチームと連絡を取り合っていく」と話した。

 検察側は日米の弁護側が総力を挙げて挑んでくる論戦に立ち向かうことになる。本裁判が始まるまでには、まだまだ長い時間がかかりそうだ。


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