記事登録
2008年09月26日(金) 15時14分

アップル、非公認のiPhoneアプリに厳しい規制。Ad Hocチャネル経由での販売も阻止Computerworld.jp

 米国Appleは、同社が正式に認めないiPhoneアプリケーションを徹底して排除する方針のようだ。同社は先ごろ、App Storeでの販売を拒否したサードパーティ製iPhone対応アプリケーションの開発者が、ベータ・テストを行ったり、企業向けにアプリケーションを配布したりするための流通チャネルである「Ad Hoc」を経由してアプリケーションを販売することもできないように措置を講じた。

【関連画像を含む詳細記事】

■「iTunesとかぶる」ため、App Storeでの販売を拒否される

 iPhoneとiPod Touchに対応するポッドキャスト管理/再生アプリケーション「Podcaster」を開発したアレックス・ソキリンスキー(Alex Sokirynsky)氏は、このアプリケーションを新規に販売することができなくなったことを確認した。Computerworld米国版が同氏に電子メールで事情を尋ねたところ、「私の作ったアプリケーションを新たにインストールすることは基本的にできなくなってしまった」との答えが返ってきた。

 Appleは、自社の楽曲・動画管理/再生アプリケーション「iTunes」と同一の機能であるという理由で、2週間前にPodcasterの販売を拒否した。同社はソキリンスキー氏に対し、「Podcasterは、ポッドキャストの普及に貢献しているが、機能的にはiTunesとまったく同じである」と通告したという。

 AppleがApp Storeでの取り扱いを拒否したのを受けて、ソキリンスキー氏は、Ad Hocを利用してPodcasterの販売を続けることにした。Ad Hocは、Appleが、サードパーティ開発者によるiPhoneアプリケーションのベータ・テストを支援する目的で今年開設した流通チャネルで、開発者がiPhone対応のカスタム・アプリケーションをビジネス・ユーザーに提供するためのチャネルという役割も担っている。

 Ad Hocでアプリケーションのビルドをダウンロードし、インストールすることができるiPhoneやiPod Touchのデバイス数は100台までとなっている。また、アプリケーションをダウンロードできるようにするには、開発者が個々のiPhoneのUDID(Unique Device Identifier)コードを入手する必要がある。

 ソキリンスキー氏は、Ad Hoc上にみずからのアカウントでWebサイトを開設し、Podcasterを9.99ドルで直接販売していた。ユーザーは、iPhoneのUDIDを入力したうえで、Podcasterをダウンロードし、インストールすることになっていた。しかしAppleは、ソキリンスキー氏のアカウントを閉鎖し、PodcasterをAd Hocから締め出したというわけだ。

■販売経路を絶たれたPodcasterの作者、ブログで本音を吐露するが……

 ソキリンスキー氏は、9月22日、自身のブログに書き込みを行い、Appleの動きを批判した。「Apple側と話し合い、問題を解決したうえで、App StoreからPodcasterを販売したいと考えていた。しかし、同社は卑劣な方法で私のポータルの機能を使えないようにした。過去に高品質のサービスや製品を提供してきた企業にしては、子供じみたやり方だ」と同氏。ただし、同氏はその後まもなくこの書き込みを削除し、その内容が本意でなかったと弁明した。

 他の開発者たちは、自社と開発者との間で行われたすべてのやり取り(販売拒否通知を含む)に守秘義務契約(NDA)が適用されるというAppleの通知と、この間のソキリンスキー氏の動きには関連があると指摘する(同氏自身は、ブログへの書き込みを削除したこととNDAとの関連について何もコメントしていない)。ソキリンスキー氏は、Computerworld米国版にあてたメールで、「Appleは、システムの抜け穴をふさいだだけであり、このことで同社が批判されるいわれはない」と述べた。

 ただし、ソキリンスキー氏は、みずから開発したPodcasterを見捨てるつもりはないようだ。22日の書き込みで同氏は、米国Googleが主導するオープンソースの携帯電話/モバイルOSである「Android」にPodcasterを移植する意向を示していた。また、Podcasterに手を加え、非正規のアプリケーションにも対応可能なように改造されたiPhoneにインストールできるようにするという手段もあるという。同氏は23日、Podcasterをコンパイルし、オープンソースのiPhoneアプリケーション・インストール・プログラム「Cydia」を使ってインストールできるようにするという考えも示していた。

 ソキリンスキー氏によると、インストール済みのPodcasterについては引き続き利用することができ、22日以前に代金を支払ったユーザーがPodcasterをインストールすることも可能だという。同氏がPodcasterを販売するのに使っていたAd Hoc上のWebサイトは、25日時点でまだ存在しているが、Appleがこれ以上アプリケーションを販売できないようブロックしたという短いメッセージが表示されている。なおAppleにも、アプリケーションの販売拒否に関するポリシや、ソキリンスキー氏が今後もAd Hocチャネルを使い続けることができるのかどうか問い合わせたが、回答は得られなかった。

(Gregg Keizer/Computerworld米国版)

【関連記事】
[特集]iPhoneのインパクト——ビジネス・ユースでの実力を測る
[解説]初のAndroid携帯電話「HTC Dream」に、iPhoneほどのインパクトはなし
米国のユーザーがアップルを提訴——「iPhone 3Gは欠陥品だ」
アップル、「iPhone」に備えた“隠し機能”の存在を認める——「願わくは使いたくない機能だ」とジョブズ氏
[解説]MobileMe騒動——アップルに顧客満足度の高いクラウド・サービスは提供できるのか?

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080926-00000004-cwj-mobi