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2008年09月26日(金) 13時51分

「就職できない!」 法科大学院修了者の新司法試験の合格率低迷産経新聞

 法科大学院を出れば「7、8割が合格」と見込まれていた新司法試験の合格率が3割強と低迷し、大学院修了者の無職化が問題となっている。法科大学院が乱立し、受験者が増え、高い合格率を信じて入学した学生がほうり出された形だ。“司法浪人”の解消や社会人の活用が期待された法科大学院導入だったが、就職難は相変わらずで、関係者は「統廃合を進めて定員を絞るべきだ」と訴えている。

 今年の新司法試験は6261人が受験。2065人が合格し、合格率は過去3回で最低の32・98%だった。当初、政府の審議会が出した法科大学院修了者の合格率の目安「7、8割」とはかけ離れた結果だ。

 「高い合格率を信じたのに…」と嘆くのは、2年前に慶応大学法科大学院を修了した男性(29)。東大在学中と卒業後、計2回受験したが不合格。転機を求め法科大学院に進学し、修了後、2回受験したが合格には至らなかった。

 今年は受験をあきらめ、一般企業への就職を目指したが「既卒で年齢も高く、どの企業も面接すらしてもらえない」と、これまでの司法試験浪人と同様の壁に直面している。現在は定職もなく、親の仕送りで生活しているという。

 司法試験受験からの転向組に就職をあっせんする「モアセレクションズ」(東京)の上原正義社長によると、昨秋から約300人が相談に来たが40人しか就職できなかった。上原さんは「司法試験受験者は社会人経験の少なさ、年齢の高さから企業に敬遠される傾向があります」と話す。

 就職難を生み出す合格率低迷の原因として挙げられるのが、法科大学院の乱立だ。当初、20校程度の設立が目標とされたが、結果は74校が設立し修了者が膨らんだ。大学院間の差も激しく、今年は合格者ゼロの大学院も3校あった。

 大塚英明・早稲田大学院教授(商法)は「今後は米国のように現役弁護士の企業就職が増え、司法試験の不合格者の立場は厳しくなる。不合格で就職できない人を大量に出さないためには法科大学院の統廃合が必要だ」と話している。

【新司法試験】「受験秀才型しか合格しない」との批判があった旧司法試験の反省から作られた。平成22年までは旧司法試験との2本立て。法科大学院で2年ないしは3年の専門教育を受けた修了者を対象に受験資格が与えられる。合格後は司法修習生として司法研修所の卒業試験に合格すると法曹資格を得ることができる。

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