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2008年09月25日(木) 13時08分

賃貸に「入れない」!? 連帯保証人の罠オーマイニュース

 昨年、東京都心の人気エリアに2LDKのマンションを購入した。「賃貸に入れなくて、やむを得ず買ったのだ」と言うと、男性の先輩・上司には「そんなわけないでしょ」とあしらわれる。だが本当に“窮鼠猫を噛む”に等しい状況だったのだ。

 ちなみに、頭金の半分以上は彼(今の旦那)が出したが名義は私のものだ。「ひどい女だ」と言われるが、私たちのように収入が不安定なカップルには、それがもっとも経済的だったのだ。自他共に認める面倒くさがり女がケツをまくってローンを組み、マンション購入に踏み切った顛末をリポートする。

  ◇

■自営業で信用がない彼と、信用されない会社勤めの私

 1年ちょっと前、私たちは結婚前提で一緒に住む賃貸マンションを探していた。駐車場代(上限5万円以内)込みで20万円強が予算である。

 自営業の彼は、仕事の関係でおもに車で移動する。したがって渋滞の影響を受けずに都心にすぐ出られるエリアが必須条件だ。自宅兼事務所でもあり広さもほしい。かたや会社員の私は終電帰りも多いため、最寄り駅まで徒歩5〜6分以内、夜でも安心して歩ける部屋が希望。

 「都心にすぐ出られて」「駅から徒歩5〜6分以内」の広い賃貸物件は、高い。20万円強だった予算はすぐに25万円以内に上方修正された。

 マンション購入という考えはまだなかった。彼が「ローンに縛られるなんてまっぴら。賃貸ならば収入の増減に応じて住み替えれば済む」という「生涯賃貸」主義だったためだ。私の考えは違ったが、面倒なので反論はしなかった。

 賃貸でも条件を満たす物件はそこそこあった。古かったり汚かったり狭かったりうるさかったりはしたが、満点の物件はないもの。そこは妥協した。

 だが、申し込み時点で思わぬ問題が生じた。「連帯保証人」の審査が通らないのだ。

■「保障会社」って何?

 仲介業者(町の不動産屋さん)によると、入籍していない者同士で賃貸マンションに入居する場合、入居者全員に「連帯保証人」が必要だが、これは「65歳以下」に限られるという(入居者が互いに保証人になることはできない)。

 年の離れた末っ子である彼のご両親は80歳代と70歳代。ご両親も自営で年金以外の収入が立派にあるのだが、審査では落とされる。訪れた仲介業者は3件いずれもこの点を指摘してきた。

 私も彼も1人暮らしが長く、賃貸暮らしには慣れている方だが、こんな行き詰まりは初めてだった。

 「ご兄弟かご友人にハンコをもらえばいいんですよ」

と仲介業者は軽くいう。だが友人と保証の関係になるのはゴメンだと彼はいい、私も同じ考えだった。同様に、兄弟にもできるだけ金銭の話は持ちかけたくない。彼が嫌な思いをしているのが分かった。

 一方、連帯保証人では問題のなかった私も嫌な思いをしていた。当時勤めていた会社が設立まもなく、資本金も少ないことを理由に、過去1年分の給与明細の提出を求められたのだ。「そこまで必要なんですか?」と聞いたが「人気物件なので大家が厳しい」という。

 不快感をだましつつ提出した書類はけんもほろろに扱われ、こう言われた。

 「連帯保証人の問題がある方のために保障会社のシステムがあります。いかがでしょうか?」

■「やっぱり納得いかない!」保証会社の面接をドタキャン

 保証会社についてはそれまでも聞いたことがあった。以前住んでいたワンルームに「連帯保証人不要、期間限定で礼金・不動産手数料も無料!」というマンションのチラシが投げ込まれていたからだ。

 仲介業者によると、要は連帯保証人の代行をする金融業の一種で、ここ数年急速に増えているのだという。貸し主(大家)にすれば、連帯保証人が入居者ごとに異なる個人よりは、一括して請け負い、借り主への取り立ても厳しい専門業者の方が面倒がない。

 仲介業者にも仲介手数料のメリットがある。このため、連帯保証人がちゃんといる入居者の場合でも、強制的に加入させるところが増えているという。

 入居者側にもメリットはあると思う。個人の考え方によるだろうが、私などは連帯保証人を頼むのはたとえ親でも気が引ける。迷惑をかけるつもりはないが、ハンコをついてもらうだけで申し訳なく、自分が情けない。

 保証料相場は、私が見た範囲で言えば、入居の際に家賃の2カ月分(敷金礼金とは別)、更新の際に1カ月分だった(保証会社にもよるが、ワンルームで更新の場合は2、3万円で済むようである)。この額を「連帯保証人を頼む心理負担軽減のため」と納得できれば払う価値はあるのだ。

 賃貸物件を探しては却下されてすでに2カ月、疲れていた私たちは、保証会社を使うことで合意した。「お金で解決できるならば」という心境だった。しかし2日後。仲介業者から来たちょっとした指示に、私は切れた。

 「面接がありますから、お2人そろって明日土曜朝9時に保証会社の事務所へ行ってください。それぞれに、印鑑を2本を用意してください」

 は?

 面接? 印鑑2本?

──保証会社とはそんなものなのかもしれない。あるいはその仲介業者が特に信用なかったのかもしれない。だが「面接」に「印鑑2本」は、私の感覚ではおかしい。その説明を積極的にしない会社は信用できないし、付き合いたくない。

 私は彼にメールを打った。

 『駅からの道が暗くて怖かったし、そこまでして入りたい物件じゃないかな』

 部屋探しは振り出しに戻った。だが、賃貸では同じことの繰り返しになることは見えていた。「結婚前提の新居探し」は行き詰まっていた。

(2)に続く

(記者:日向 藍子)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080925-00000002-omn-soci