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2008年09月25日(木) 00時00分

「補正」引き金に 11月総選挙へ読売新聞

 麻生政権が24日、発足し、与野党は総選挙に向けて走り出した。「10月21日公示—11月2日投開票」の日程を固めた麻生首相は「選挙の顔」として自ら衆院選の前線に立つ構えだ。対する民主党の小沢代表は「政権交代の秋」を掲げ、総力戦で臨む。(政治部 穴井雄治)

民主と協調でも決裂でも——麻生自民 10月上旬解散 ■顔と景気

首相官邸に入る麻生首相(24日午後)=小西太郎撮影

 「政策を実際に実行し得る力は我々政権与党である自民党以外にあり得ない。民主党では断じてない」

 麻生首相は24日昼、首相指名選挙を目前に控えた自民党両院議員総会でこう力説した。

 首相は衆院選に臨むにあたって、国民的人気の高い自らを「選挙の顔」として最大限利用する考えだ。通常は官房長官の仕事である閣僚名簿の発表を自ら行ったのも、その一環だ。

 同時に、前面に打ち出したのが、景気重視の姿勢だ。財務・金融相には積極財政論者の中川昭一氏を起用。閣僚名簿発表の際には、閣僚ごとに重視すべき政策を個別に挙げる中で、景気回復への決意を示し、鳩山総務相には「地域の元気回復」、舛添厚生労働相には「雇用の安定」、二階経済産業相には「中小・零細企業の抱えている問題」への対応をさせると強調した。

■3連休中日

 首相が衆院解散の前に2008年度補正予算の成立をさせるべきだと繰り返してきたのも、「景気重視の麻生」をアピールする狙いからだ。これが、衆院選の日程を、当初の与党の構想から変えることになった。

 与党は当初、11月9日投開票で調整を開始。その後、自民党総裁選の余勢を駆って衆院選に臨む戦略から10月26日投開票に前倒しする案が浮上。それが、首相の補正予算成立の可能性を探る意向を受け、11月2日投開票に落ち着いた。

 政府・与党は29日に補正予算案を国会提出し、各党代表質問のあと、10月6日から衆院予算委員会で審議を始める予定だ。


民主党参院議員総会に向かう小沢代表(24日午前、国会で)=岩波友紀撮影

 首相がまず念頭に置くのは、民主党の協力を得て衆参両院で2日ずつ審議し、10月9日に補正予算案を成立させ、ただちに解散する「話し合い解散」だ。

 燃油高騰対策などを柱とする補正予算案は、首相が幹事長時代にまとめた緊急経済対策を具体化する内容で、麻生カラーを発揮する好材料と位置づけている。

 ただし、民主党が審議引き延ばしを図った場合は、補正予算案の衆院審議の途中でも、解散に踏み切る考えだ。「『民主党が景気対策の邪魔をした』と批判できる」との読みがある。麻生氏周辺は「これまでの民主党の対応をみれば、話し合い解散より、見切り発車の可能性が高い」と語る。

 大島理森国会対策委員長は24日、補正予算案について記者団に、「一日も早い成立を願う」と述べた。その一方で、補正予算案には民主党が反対したガソリン関連税の補填分が含まれていることに触れ、「これは民主党の後始末をする補正でもある」と語り、民主党が法案の早期成立に協力するとは考えにくいとの見方をにじませた。

 投開票日となる11月2日は、土曜日を含めると3連休の中日にあたり、「行楽などで投票率が低くなることを狙っているのではないか」との批判が出ることを懸念する声が与党内にはあった。だが、最近は、期日前投票の活用が定着していることもあり、首相は反論できると判断したようだ。

■合言葉

 「いよいよ、最終決戦のスタートの日を迎えた。昨年は(参院選で)『逆転の夏』の合言葉どおりの結果を出した。今年はまさに『政権交代の秋』だ」

 民主党の小沢代表は24日の代議士会で、こう訴えた。

 野党共闘で政府・与党批判を強め、「政権交代ムード」を盛り上げるのが小沢氏の戦略だ。08年度補正予算案審議に当面協力する構えを見せるのも、予算委員会という、「政府・与党の不祥事を追及する舞台」を確保することが選挙に有利だとの判断からだ。24日夕には小沢氏と菅代表代行ら幹部が国会対応を協議、〈1〉農薬などに汚染された「事故米」〈2〉厚生年金の記録改ざんへの社会保険庁職員の関与〈3〉リーマン・ブラザーズ破綻——の「3点セット」の追及を決めた。菅氏は記者団に、「実質上の話し合い解散になるなら、我が党も対応したい」と語った。

 社民党の辻元清美衆院議員は24日、就任あいさつに訪れた首相に、「麻生さんの失言を引き出せるように頑張ります」と語りかけた。

■史上最短

 社民党の福島党首は24日午前、首相が早期解散に踏み切る意向であることを踏まえ、民主党の鳩山幹事長に、「『自民党史上最短内閣』にするべく頑張りましょう。自民党が与党である最後の内閣になるように」と呼びかけた。鳩山氏は「(最短の解散は)鳩山内閣だった」と笑わせた。

 民主党が補正予算案の審議に協力せず、首相が10月7日に衆院を解散した場合は、就任からわずか14日目での解散となる。現行憲法下では鳩山幹事長の祖父、鳩山一郎首相の46日目の解散が最短なので、麻生首相がこの記録を塗り替えるのは確実な情勢だ。

 就任40日目の11月2日の衆院選で敗れると、後継首相がすぐに選ばれれば、現行憲法下で最も在職期間が短い羽田首相の64日より短命となる。

「比例は公明」呼びかけず 「効果ない」

 自民党は次期衆院選の小選挙区選候補に対し、「比例は公明に」と支持者に呼びかける選挙運動をしないよう徹底する方針を決めた。古賀選挙対策委員長が提案し、公明党の太田代表も受け入れた。これまで、小選挙区選で公明党支持者の協力を得る見返りに、自らの後援会などに「比例は公明に」と呼びかける例が多かった。しかし、公明党からも「自民党支持者に反発され、効果がない」(幹部)と指摘が出ていた。

http://www.yomiuri.co.jp/feature/20080924-4471734/20080925_01.htm