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2008年09月24日(水) 15時56分

【元公安庁長官再尋問(2)】意味深メモ「43歳 確信犯 大義あり OK」産経新聞

 《以前の公判では、航空ベンチャー会社社長のAさんが「緒方重威被告らに朝鮮総連中央本部売買取引の資金調達を約束していない」などと証言し、共犯として起訴された河江浩司被告も大筋で検察側に有利な証言をした。これに対して、この日の尋問では緒方重威被告が静かな語り口ながら、激しく反論。質問は、緒方被告がAさん、河江被告とJR東京駅内のカレーショップで取引の話をしたとされる平成19年5月26日の経緯について続く》


 緒方被告の弁護人「河江被告からは『Aさんが(総連本部売買取引のために)海外の資金を取り崩している』と聞いていましたか」

 緒方被告「はい。『(取引に在日朝鮮人を助けるなどの)大義を感じている人もいるので、そういう人も入ってやった方がいい』という話でした」

 緒方被告の弁護人「Aさんから資金調達方法について『同じ志を持った仲間がいる。この人たちに声をかけてファンドを組み上げたい』と説明されたとき、『おや?』と思ったということでしたが、どういう意味ですか」

 緒方被告「そんなことまで考えてくれていたのかと。ただ、(Aさん自身が出資するかファンドを組むかの)2本立てということなので大丈夫かというか、そんなことまで考えてくれていたのかと」

 緒方被告の弁護人「海外資金の(総連本部取引への)投資は確実と思ったのですね」

 緒方被告「大丈夫というよりは、(総連代理人の)土屋(公献弁護士)先生のいう(取引契約成立の期限)5月31日に間に合うかが問題でした。大丈夫かと」

 緒方被告の弁護人「Aさんは『大丈夫』と言いましたか」

 緒方被告「はい。ただ、『(資金調達方法を)どっちにするかは私にまかせて下さい』といいました」

 緒方被告の弁護人「河江被告がAさんと次にいつ会うか、話をしましたか」

 緒方被告「(河江被告は)『(5月)29日に会うことになっているので大丈夫です』と。ただ、取引契約をいつ履行するか確認していなかったので、『履行はいつか』と聞くと、河江さんは『5月29日に会って確認します』と」

 緒方被告の弁護人「そのときの会合は手帳に記入しましたか」

 緒方被告「はい」


 《この証言を待っていたかのように、弁護側はその手帳を証言席の緒方被告に示す》


 緒方被告の弁護人「この手帳のどこに」

 緒方被告「ここです。『A43歳 確信犯 大義あり OK』とあります。27日の欄になっていますが、『26 PM2時30分 Aと八重洲』とあります」

 緒方被告の弁護人「いつ記載したのですか」

 緒方被告「これはだいぶ後です。6月13日に(総連本部売買取引について)記者会見をやり、東京の百貨店特別食堂で満井(忠男被告)さんと河江さんと会ったときです」

 緒方被告の弁護人「『43歳』はどういう経緯で書き込んだのですか」

 緒方被告「会見で記者から『Aさんというのはいくつか』と聞かれ、答えられなかったので、河江さんに『Aさんはいくつか』と聞いて、書き込んだのです」

 緒方被告の弁護人「『確信犯』は」

 緒方被告「5月26日に(資金調達に)確信を持ったという意味です。『大義があるから』と言っていたので、この調達は大丈夫と」

 緒方被告の弁護人「『OK』とは」

 緒方被告「Aさんにお願いして『大丈夫、OK』という意味で書きました」

 緒方被告の弁護人「5月26日にAさんから『不動産投資はしない』と言われたことはありますか」

 緒方被告「ありません」

 緒方被告の弁護人「『(北朝鮮関連の取引は)自分が絡めば、ヨーロッパで取引できなくなる』と言われたことは」

 緒方被告「ありません」

 緒方被告の弁護人「『6月1日までに35、6億円は無理だと』言われたことは」

 緒方被告「ありません」

 緒方被告の弁護人「『ファンド運用はしていません』と」

 緒方被告「ありません」

 緒方被告の弁護人「『(投資を)きっぱりと断った』という証言は、事実と違う?」

 緒方被告「はい」


 《緒方被告はAさんの証言を次々に否定していった。冷静な語り口調の中に、怒りがうかがえる。この後、緒方被告の口からは、Aさんの人格攻撃ともとれるような激しい証言が飛び出す》


 緒方被告の弁護人「Aさんや河江の証言を聞いて、どう思いましたか」

 緒方被告「それぞれの立場があり、Aさんはいまの仕事もあり、本当のことを言えなかったのかと。本当のことを言ってほしい」

 緒方被告の弁護人「(19年)5月26日には、信頼できると思っていましたね」

 緒方被告「はい」

 緒方被告の弁護人「現在ではどうですか」

 緒方被告「ずいぶんでたらめを言うなと。人間性に疑問を持ちます。30〜50%の利回りがあると言って、金を引いて2年以上も返していないという話も出ました。ずいぶんいい加減な人間だという印象です。私は(東京地検特捜部に)拘束された後、弁護士からAさんが60億円の証券を持って別の所で資金調達しているという話も聞きました。『そんなところで』と思いました。後からインターネットで調べたら、民事訴訟で訴えられていることも知りました。うかつだった。嘘を見抜けなかったと思っています」

 緒方被告の弁護人「5月26日のことについては満井さんに報告しましたか」

 緒方被告「はい。『緒方先生が太鼓判を押すなら大丈夫』と信じ込んだと思います」

    =(3)に続く

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