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2008年09月24日(水) 15時34分

【元公安庁長官再尋問(1)】関与の動機は「総連本部なくなると監視できない」産経新聞

 《在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)から中央本部の土地・建物と資金をだまし取ったとして、詐欺罪に問われた元公安調査庁長官、緒方重威(しげたけ)被告(74)と元不動産会社社長、満井忠男被告(74)の第16回公判が24日午後1時15分から、東京地裁103号法廷で始まった。この日も前回(17日)に引き続き、緒方被告の被告人質問が行われ、弁護人による主尋問は本格化する》

 《前回は、緒方被告が総連中央本部の売買交渉に関与しはじめてから、売買代金を投資する人物として最終的に残った航空ベンチャー会社社長のAさんと会った場面までの経過を、緒方被告の弁護人が“駆け足”で質問した。これに対し、緒方被告は詐欺の犯意を明確に否定。林正彦裁判長に何度も注意されるほど“雄弁”に、検察側主張に真っ向から反論していった》

 《林裁判長が緒方被告の弁護人から提出された意見書について弁護人に確認した後、証言席につく緒方被告。グレーのスーツの胸にはいつも通り、弁護士バッヂが輝いている。前回同様、落ち着いた様子だ》


 緒方被告の弁護人「前回聞き落とした件について補足で聞いていきます。緒方被告は平成19年3月中、下旬ごろ、満井被告から何度か総連中央本部の売買への協力を求められていましたね。その協力とはどんなものだったのですか」

 緒方被告「売買に絡んだ書類の作成とか、資金調達に絡んで作る書類など取引絡みで作成される契約書類に関与することだろうと思っていました。それと、投資家になる人への事情説明も協力の中にあったと思います」

 緒方被告の弁護人「法律的な書類の作成ということですか」

 緒方被告「契約書類です」

 緒方被告の弁護人「当初は売買の受け皿会社の代表者になるという話は?」

 緒方被告「考えていませんでした。成り行きから受け皿の話が出て、満井さんや(総連代理人だった)土屋(公献弁護士)さん、総連の趙(忠治財務担当常任委員)さんから『代表者になってもらえればありがたい』と言われましたので、受けました」

 緒方被告の弁護人「売買に関与した動機ですが、前回の証言を要約すると、旧満州から引き上げてきた際の経験から祖国の大切さを感じていたということ、中央本部は北朝鮮の大使館機能を果たしているということ、弁護士10年という節目として社会に役立ちたいという気持ちがあったということですが、それ以外の動機はありましたか」

 緒方被告「公安調査庁に奉職していたときは総連をウオッチする立場にいました。中央本部がなくなると監視しにくくなる、拠点は1カ所にあったほうがいいという考えもありました」


 《その後も、日朝関係などに言及し、売買に関与した動機を語る緒方被告。この質問の後、弁護人の質問は事件の個別場面に移る》


 緒方被告の弁護人「19年4月24日のすし店の場面について聞きます。緒方被告は前回、『満井被告と河江被告と会ったとき、本件(中央本部の売買)の話ばかりではなかった』と証言していましたが、雑談も含めてどういう話をしたんですか」

 緒方被告「河江さんとはほとんど初対面だったので、どういう人かということや、河江さんの役割とか、そういう観点から問いかけをしました」


 《緒方被告はときおり笑みを浮かべながら河江被告との会話を思い出す。話は河江被告と緒方被告の故郷が近いことに及び、弁護人が「簡単に」と指摘する》


 緒方被告の弁護人「それ以外には、(売買の受け皿になる)ハーベスト投資顧問の代表者の変更や、投資家探しの進捗状況などですか」

 緒方被告「そうです」

 緒方被告の弁護人「満井被告が来てからはどういった会話を?」

 緒方被告「投資家探しは順調ですねといった話でした」

 緒方被告の弁護人「河江被告が満井被告と1億円の報酬を約束していたという話はありましたか」

 緒方被告「はい。河江被告が『満井さんが守ってくれるかな』と不安そうにしていたので、満井さんには『1億円、約束しているんですか』と聞きました。満井さんは『そうです』と言っていました」

 緒方被告の弁護人「本件の話ばかりでしたか」

 緒方被告「そういうわけではありませんでした。私は日本酒を飲んで、河江被告さんはビールを飲んで…。お互い機嫌がよくなっていってましたから、取引の話をぎりぎり詰めていったというわけではありません」

 緒方被告の弁護人「河江被告は緒方被告の報酬について『1500万円でいいのか』と聞き、満井被告が『あなたは心配しなくていい。それは私が考えること』と言ったということはありましたか」

 緒方被告「満井さんが来る前に私の報酬の話が出たのは確かですが、満井さんが来てからその会話があった記憶はありません」

 緒方被告の弁護人「結論としてはそういう会話はなかったということですね」

 緒方被告「はい」


 《検察側が現金詐欺で重要視している4月24日のすし店の場面。検察側は、緒方被告と満井被告が報酬の分配について生々しいやり取りをしたと主張しているが、緒方被告は河江被告の報酬の話が出たことは認めたが、自分の報酬については明確に否定した》


 緒方被告の弁護人「19年5月26日に(航空ベンチャー会社社長の)Aさん(法廷では実名)と河江被告と東京駅で会ったときの会話について聞きます。カレーショップで話をしていますが、その前に喫茶店に入ろうとしたら満杯だったのですか」

 緒方被告「駅内の喫茶店にAさんがさっと入って席を探していましたが、いっぱいだったので『ほかを探しましょう』と言って出てきました。Aさんは非常にフットワークのいい人だなと思いました。カレーショップもAさんが『ここ空いてるし、食事も取らなくていいし』と言って探してきて、Aさんの案内で席に着きました」

 緒方被告の弁護人「店を見つけて、席に案内して…。Aさんの取引への姿勢はどう考えましたか」

 緒方被告「Aさんは私から取引について何か聞きたい、取引話に飢えている、そういう風に感じました。座った早々、新幹線の切符を取って、すぐにビジネスライクに話が進む雰囲気でした」

 緒方被告の弁護人「その席でAさんに『海外で運用している金が60億円ある』という話を聞きましたね。その話はほかにだれから聞きましたか」

 緒方被告「河江さんからです」


 《フットワークの良さ−。緒方被告の弁護人はAさんとの出会いを詳述させることで、Aさんが中央本部の取引に積極的だったということを法廷に印象づけたいようだ》

    =(2)に続く

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