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2008年09月23日(火) 08時01分

【Re:社会部】これからを生きるために産経新聞

 「最後の声、最後の表情はどのようなものだったのか。最後の瞬間を自分の言葉で直接、被告に聞いてみたいのです」

 殺人事件で妻を失った経験を持つ男性が、取材中にふと漏らした一言です。たとえ残酷でつらい場面であっても、最愛の家族を失った遺族として最後の瞬間を聞きたいと訴える男性の姿に、遺族が抱える苦悩の深さを痛感しました。

 こんな声に後押しされる形で、被害者・遺族が刑事裁判で被告に直接質問などができる被害者参加制度の導入が決まり、12月1日から施行されることになりました。

 精神保健学や被害者学を専門とする武蔵野大教授の小西聖子氏はこう指摘します。「被害者とは、被害にあってただ傷つき犠牲となってしまった人であってはならない。困難な状況から生還し、これからを生きる人でなければならない」(『現代の犯罪』、新書館)

 被害者・遺族の一部には、精神的負担の増加などを挙げて被害者参加制度に反対する意見が根強いのも事実です。それでも、制度が1つの権利として「これからを生きる」ための有効な被害者対策となることは間違いありません。

 経済的支援や再被害防止対策など、被害者・遺族を取り巻く環境はいまだ不十分です。事件報道に携わりながら、被害者・遺族の抱える苦悩の軽減につながる被害者対策のあるべき姿についても考え続けたいと思っています。(創)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080923-00000073-san-soci