記事登録
2008年09月23日(火) 16時00分

トヨタ、若者のクルマ離れに強い危機感 「クルマ授業」実施で将来の顧客作りMONEYzine

 トヨタ自動車は、次世代を担う小学生を対象に、「クルマの魅力・楽しさ」「クルマと環境・経済との関わり」などを、楽しみながら体感・学習してもらうための授業を、年内5箇所の小学校で開催する。

 4年生向け「クルマ原体験教室」と5年生向け「クルマまるわかり教室」の2種類のプログラムを用意し、いずれも小学校の総合学習や社会科の授業の一環として行う。「クルマ原体験教室」は9月26日に大分県の小学校で、「クルマまるわかり教室」は9月30日に福島県の小学校で、第1回目を開催。来年度以降、さまざまな地域で、より多くの小学生が体験・学習できるよう計画を進めている。

 トヨタが危惧するのは、国内で進む若者のクルマ離れだ。すでにクルマを所有していることが「ステータス」であるという時代ではなくなってきている。パソコンやテレビゲームの普及などによる「趣味の多様化」により、購入や維持費に大きな負担がかかるクルマは現代の若者に敬遠される傾向にあるのだ。このため、若者のクルマ離れを防ぐために、次世代を担う小学生のうちからクルマに興味を持ってもらい、将来の市場の土台を作るのが、今回のような授業を実施する主な目的の1つだ。

 しかしなぜトヨタは国内マーケットに対し、地道な努力を行うのだろうか。というのも、2008年度3月期の決算によると、グローバル展開を続けるトヨタの日本市場の割合は24.6%。891万台の販売台数のうち、75%以上を海外で販売しており、もはや主要マーケットは欧米、新興諸国などの海外市場に移っている。そして両者の比率は年々広がっていくとみられており、もはや国内市場にこだわる必要はないのだ。

 それでも同社が国内市場を重要視するのは、屋台骨となる日本で存在感を失えば世界でも競争力を保てないという危機感だ。トヨタのある幹部も、「日本でトップだという存在感を見せ続けなければ、世界展開でも躓いてしまうだろう」と話す。また若者のクルマ離れは日本だけとは限らない。経済成長を続ける中国の若者も日本と同様、インターネットなどの普及により、趣味が多様化しており、富を得るようになってもクルマを購入するとは限らない。さらに世界的なエコ意識の高まりにより海外ではオランダのように、国が「企業に対する税法上の自転車通勤優遇政策」を実施することで、自転車通勤を奨励する企業が出てきており、業界には危機感が高まっている。

 このため同社は10年後、20年後のマーケットを今から育てていく必要性から、「クルマ原体験教室」など子ども向けのプログラムが国内で浸透し、効果が得られたら、海外にそのノウハウを輸出することも視野に入れていると見られる。2008年3月期の決算では、売上高から当期純利益まですべての項目で過去最高記録を更新した同社だが、その歩みを止める暇はない。

【関連記事】
最強企業トヨタが抱える深刻な悩み 「レクサスの不振」のなぜ
プリウス、モデルチェンジ前でも納車2ヵ月待ち
トヨタ原油高どこ吹く風 純利益過去最高で取締役1人当たり1億2200万円
トヨタが新型燃料電池ハイブリッド車を開発

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080923-00000000-sh_mon-bus_all