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2008年09月20日(土) 10時00分

【トレンド】アフィリエイト、地デジ...トレンドで消費者をだます悪質販売業者nikkei TRENDYnet

 カタログ通販大手の「ベルーナ」が、特定商取引法違反で経済産業省から6カ月間の業務停止命令を受けたのは、7月のことだ。高額な呉服などを販売する目的を隠して展示会に消費者を勧誘しただけでなく、営業員などが複数で取り囲んで強引に契約を結ばせたり、クーリングオフ期間にもかかわらず、消費者からのクーリングオフを受け付けなかったなど、悪質な販売方法が問題になった。最近は、食品の偽装や、事故米の転売など、企業の儲け優先の姿勢が目立つ。消費者をだます悪質販売の被害も後を絶たない。その現状を探ってみた。

悪質販売の手口に変化なし

 国民生活センターによると、消費生活相談の数は、5年連続で年間100万件を超えているという。中でも、相談全体の半数以上を占めるのが、通信販売や訪問販売、電話勧誘販売などの「店舗外販売」。多くが悪質販売の被害と考えてよさそうだ。

 悪質商法に詳しい行政書士の水口結貴氏によると、「悪質商法の手口は、昔からほとんど変わっていない」のだという。変わっているのは、「商材」だ。

 例えば、「自宅で高収入」などとうたい、不況の影響からか増加傾向にある「内職商法」。以前ならレセプト作成や宛名書きなどが代表的だったが、個人情報保護法の施行以来、レセプト作成は内職では行えなくなり、宛名書きもパソコンやワープロの普及で減った。増えているのが、ホームページ作成やデータ入力などパソコンを使用したもので、パソコンや教材を高額で売りつけるといった具合だ。

「悪質商法の業者は、時代を見る目に長けている」(水口氏)。例えば、IT起業がブームになったときには「未公開株」、アフィリエイトがブームになったときにはアフィリエイトで稼ぐ方法といった「情報商材」を販売する悪質販売が増えた。今後は、地デジのアンテナ詐欺などが増えるかもしれないと心配する声もある。

 手口よりも、よく知らない、わからない商材に注意しなくてはならないわけだ。このほか、目立つのは、一度被害にあった人が、何度も被害にあうケース。被害者の名簿が出回っているため、悪質業者から被害者へのコンタクトが多いことも理由の一つだが、一度騙された人は、何度も騙される傾向があるので注意が必要だ。

代表的な悪質販売

 身を守るためには、相手の手口を知ることが大切だ。そこで、悪質販売の代表的なパターンをチェックしておきたい。

1.訪問販売 セールスマンが自宅を訪問するもので、手口は古典的だが、被害は減っていない。「消防署」など公的な団体をかたり、勘違いさせて売りつける「かたり商法」、無料サービスや点検サービスと称して、高額商品を売りつける「点検商法・サービス商法」、金やプラチナ、海外先物などを売りつけるが、権利証や預かり証をくれるだけで現物を渡してくれない「現物まがい商法」などがある。比較的高齢者の被害が多い。

2.キャッチセールス アンケートや図書券などのプレゼントを口実に、街頭でセールスマンが声を掛けてきて、業者の営業所などに連れて行かれて、高額な商品を売りつけるもの。商材は、エステサロン、化粧品、英会話教室、絵画、自己啓発講座などが多い。被害者は20歳代中心で、女性も多い。

3.催眠商法(SF商法) 特殊な会場を利用して商品を売りつけるもの。無料の景品をもらうつもりだけだったのに、会場の雰囲気にのまれて高額商品を買ってしまうパターンが多い。布団や宝石類、着物、家庭用電気治療器などが商材。60〜80歳代の女性に被害者が多い。

4.アポイントメントセールス 電話や手紙などで消費者の自尊心をくすぐって消費者を誘い出すもの。「プレゼントに当選した」などの口実で呼び出されて、結局、商品を買わされる「当選商法」が多い。商材は会員権、英会話スクール、学習塾、海外旅行の割引サービスなどが増えている。

 また、異性が勧誘者で、恋愛感情を利用して販売につなげるのが「デート商法」も増加。出会い系サイトで知り合った人から勧められて高価な宝石などをローンで購入させられるケースが多い。これは20〜30歳代の被害者が多い。

5.資格商法(士商法) 会社での評価に有利、将来役に立つなどと電話で勧誘してくるパターン。ライバルに差をつけたいなど、ビジネスパーソンの気持ちをついてくる手法も使われる。宅地建物取引主任者や社会保険労務士、司法書士などの難しい国家資格の受験教材を売りつけてくるものもあるが、適当な民間資格をでっちあげているものもある。20〜40代会社員の被害者が多い。

6.二次被害・二次勧誘 資格商法などで、講座を受講したり資料請求した人は「名簿」に登録される。その名簿が「カモリスト」などと称されて売買され、被害が広がるケースがある。また、名簿から名前を削除するために、高額の手数料を要求されることもある。20〜40代の被害者が多い。

7.内職商法(サイドビジネス商法) 新聞のチラシや雑誌の広告などを利用し、副業や内職、SOHOなどの名目で応募させ、仕事を紹介する代わりに登録費や研修費、教材費、備品類を高額で購入させる一方、十分な仕事を紹介しない手法。最近は、ホームページ作成やデータ入力などパソコンを使用するものが増えており、高額なパソコンや、教材を売りつけられる。ただし、パソコンが苦手な人向けに、チラシ配布など古くからある職種も多い。20〜30歳代の被害者が多い。

8.ネガティブオプション(送りつけ商法) 突然、注文もしていない商品が届き、代金を請求される手法。以前は書籍が多かったが、最近は蟹などの食べ物が送りつけられることもある。代引きの場合、代金を払うとお金を取り戻すことができないので要注意。届いた商品は、未使用のまま14日間保管しておけば、後は自由に処分していい(返送義務や連絡義務はない)。クーリングオフを行う必要はない。

9.マルチ商法(ネットワークビジネス、MLM) 商品を販売する会員を勧誘し、販売実績に応じてマージンを受け取る仕組み。プラミッド型の商品流通組織を構築する。健康食品や化粧品、健康器具などが多い。被害者は20歳代が多い。

インターネットで被害が拡大

 このように悪質商法を見ると、「場所」にいくつかのパターンがあることが分かる。訪問販売は「自宅」、キャッチセールスは「街頭」、アポイントメントセールスや資格商法は「電話」といった具合だ。

 アポイントメントセールスの一つ「デート商法」でよく使われているのが、「出会い系サイト」だ。デート商法と出会い系は親和性が高いからだ。

 同様の心配がされているのがミクシィなどの「SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)」と「マルチ商法」の組み合わせ。現実社会では、マルチ商法で商品を売る相手を見つけるのは大変だが、インターネットを利用すれば、相手を見つけるのが容易になるからだ。実際、SNSでマルチ商法やマルチまがい商法の被害も出始めている。

 現在では、ケータイやパソコンが低年齢層にまで普及し、インターネットが身近になっている。アダルトサイトや危険なサイトに子どもたちが近づく危険性も増した。無防備な子どもを騙す悪質商法を心配する声も出てきているそうだ。

悪質販売を見極めるには?

 悪質販売で扱っている商品は、ごく普通にお店などでも売られているものが多い。それでは、悪質販売と、悪質ではない通常の販売とを見極めるには、どうしたらいいのだろうか?

 水口氏によると「内職商法の場合は、契約する際に、高額の登録費や教材費が必要なものは、99%悪質と考えていい」という。金額は、ほとんどが50万円程度(49万円など)で、ローンを組んでトータルの支払いが70万円程度になるものが多いという。これは、50万円程度までならすぐに信販会社のローンが組めるからだ。

 このほか、・すぐに契約しない・商品を薦められたら、インターネットで、商材や販売会社のの詳細な情報とクチコミ情報を調べる・家族や友人、職場の上司などに相談することも有効だ。

クーリングオフで契約を解除できる

 クーリングオフは、契約後一定期間の間、消費者側から一方的な契約の撤回や解除を無条件にできる「消費者の権利」だ。クーリングオフをすると、その契約はなかったことになり、費用などを払う必要はなくなる。また、すでにお金を払ってしまっている場合には、その金額を返してもらうことができる。

 クーリングオフは、特定商取引法や割賦販売法などの法律で規定されていて、対象となる商品やサービス、期間などが決まっているが、悪質商法の多くは、クーリングオフを行えば、契約を解除できる可能性が高い。

 ところが、ベルーナ事件では、クーリングオフを申し出た消費者に対して「有名な先生の着物なので、クーリングオフはできない」といった嘘の説明をして、クーリングオフに対応しなかった。ほかの会社でも、クーリングオフをしようと電話をすると「担当者がいない」と言われたり、口頭ではクーリングオフを受け付けたような対応をとりながら、実際には解約手続きをしてくれないケースもある。

 このような対応を受けないためにも、クーリングオフは書面で通知する必要がある。通知はハガキでも可能だが、クーリングオフの内容や申し出た日付が重要になるので、内容証明郵便が安心だ。

クーリングオフができないときには

 クーリングオフ期間が過ぎてしまったり、商品がクーリングオフの対象でない場合、通信販売で購入したときなど、クーリングオフができないこともある。しかし、クーリングオフ期間が過ぎていても、悪質販売の場合には契約を解除できるケースも、実は少なくない。

 例えば、契約者に事実と異なる説明をしている場合や、正確な契約書を渡していない場合には、契約が成立していないと見なされて、契約を解除できる。クーリングオフは、店舗で契約した場合には適用されないが、販売員に勧誘されて店舗を訪問したり、店舗と勘違いさせるような場所で契約しているケースも多い。この場合にも、クーリングオフをすることが可能だ。

 また、化粧品や健康食品などで開封した場合でも、販売者が「使い方を説明します」「中身を確認しましょう」などと勝手に開封したときには、クーリングオフが可能になる。エステや語学教室、学習塾、家庭教師など、長期間のサービスは、一定の解約手数料を支払うと中途解約できることも多い。

 ただし、悪質販売業者は百戦錬磨。素人が正しいことを申し立てても、言いくるめられたり、ごまかされてしまうことも多い。諦める前に、消費者センター、クーリングオフを扱う弁護士や行政書士などの専門家に相談するべきだ。

(文/根本 佳子)

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