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2008年09月19日(金) 15時03分

「見えない障害」高次脳機能障害の支援ネット設立へ 大阪府産経新聞

 病気や事故による脳の損傷で記憶や感情のコントロールに障害が生じながら、周囲の理解が得られにくい「高次脳機能障害」の当事者と家族を支援しようと、大阪府が中心となり、来年度にかけて支援ネットワークを発足させることが決まった。府内8地域にそれぞれ拠点を設置し、自宅近くで適切な診察や社会復帰に向けたきめ細かな支援が受けられるよう準備を進めており、医療・福祉機関や作業所など150以上の団体が参加の意向を示す先進的な支援体制づくりとして注目が集まっている。

 高次脳機能障害は中途障害のひとつ。全国に30万人以上の当事者がおり、大阪府内では年間約1100人が発症しているとされている。外見からは症状がわかりにくいため「見えない障害」ともいわれる。周囲の理解を得られないばかりか、医療機関でも当事者にどんな支援が必要か判断できずにたらい回しにされるなど適切な支援を受けることができない人も多い。

 大阪府には、過去に事故で頭を打ったり、脳梗塞(こうそく)や脳出血を患ったりした当事者や家族から「身近なところに相談できる場所がほしい」という声が多数寄せられており、症状に合わせた適切な治療やリハビリなどの支援体制づくりが必要と判断。

 府が昨年行った府内約740の医療機関・福祉機関に対するアンケート調査では、うち約150機関がネットワークへの参加の意向を示した。また、今夏、医療関係者や福祉団体の関係者約200人を集めてネットワーク発足に向けた会議を初めて開催し、それぞれの立場から現状や問題点を報告し、連携の必要性を確認しあった。

 これらの意見や意向をふまえ、府では府内を豊能、三島、北河内、中河内、南河内、泉州、大阪市、堺市の8地域にわけ、各地域の医療機関や福祉機関に拠点の設置を検討。当事者が日中に活動したり、家族らの相談窓口として医療機関や作業所、行政が連携して支援できる体制づくりを進めている。

 府障がい者自立相談支援センター身体障がい者支援課の久保博康課長は「各機関の受け入れ態勢もさまざまで課題もあるが、多くの機関が共通の認識を持って取り組めるよう支援したい」と話している。

 脳損傷者の自立や社会参加を支援しているNPO法人大阪脳損傷者サポートセンターの加道祐子理事は「思わぬ事故や病気で障害を負った人が希望をもって生活できるよう、各機関がそれぞれの専門を生かし、連携して支援を行うことが必要」と話している。

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