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2008年09月19日(金) 21時10分

【事故米不正転売】怒りのリスト業者「私たちは逃げられない」産経新聞

 三笠フーズの事故米の不正転売問題で19日、太田誠一農相と白須敏朗農林水産事務次官が相次いで辞任した。事故米流通先として実名公表の対象となった業者は風評被害も出始めた逆風と混乱のまっただ中。内閣総辞職を24日後に控えた農水相の「駆け込み辞任」に、失望や怒りが噴出した。

 「彼らは逃げれば済むが、私たちは逃げられない。これから先が心配だ」。宮崎県美郷町の和洋菓子製造業「日向庵」の川村義幸社長(62)は憤る。「農水相はリスト公表の際に、『政治生命をかけて公表する』と言ったが、命がけなのは私たち」

 農水相は辞任を表明した19日の会見で、「政治的な責任を決めなければいけないと思った」と話したが、「責任を言うならば問題発覚直後にやめるべき。『どうせ辞めるなら格好つけて辞めよう』と、タイミングを見計らっていたように見える」と指摘した。

 兵庫県明石市の和菓子店「明植堂」の植田善仁社長(49)も「農水相の辞任は、総選挙を有利に戦おうとする圧力が働いているのではないか」と不信感を表した。

 「九十六回も検査して見落としているんだから、(責任の取り方としては)不十分。首相にも腹が立つ」と怒りをあらわにするのは神戸市の和菓子材料卸「延命寺商店」の延命寺治雄社長(53)。「末端のわれわれが一番被害を受けている。補償してほしいし、安全性を確保してほしい」。奈良県五条市の和菓子製造、西尾輝一さん(65)は「大臣も次官も、辞めるだけでなくこれまでの給料を迷惑を掛けた国民や業者に返すべきだ」と手厳しく指摘した。

 三重県四日市市の食材卸業「ミルズカトウ」の加藤芳男社長(49)は、「辞めて終わりというのでは誠意が見えない。第三者機関での調査など、今後の道筋についてそれなりの結論を出してから辞めるべきだった。次の大臣に期待するしかないが…」と失望を隠さない。

 リストが公表されてからは、複数の納入先が、ミルズ社との取引見直しを検討し始めたという。「『社名が入ったトラックを店の前に止めないでほしい』と言われたこともある。犯人探しの責任追及よりも、国が一刻も早く安全宣言を出し、問題が沈静化してほしいというのが一番の願いだ」と話した。

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