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2008年09月17日(水) 13時01分

北京パラリンピック:競泳・奈良選手、3大会連続メダル逃す /群馬毎日新聞

 ◇健闘ねぎらう恩師に「ロンドンまでお願いします」
 北京パラリンピックの競泳女子五十メートル自由形(運動機能障害5)で奈良恵里加選手(30)=前橋市上増田町=は6位入賞に終わり、3大会連続のメダル獲得は逃した。中学生の時から指導してきた柴田安秀コーチ(40)=同市堤町=は教え子の泳ぎを現地で見守り、レース後は「良く頑張った。お疲れさま」と優しくねぎらった。
 奈良選手は百メートル6位、四百メートル8位。柴田コーチは13日に北京に出発し、四百メートルと五十メートルはプールサイドから見守った。「自己ベストを伸ばしても届かなかった。4年前より世界が強くなった」と敗因を分析した。
 柴田コーチが奈良選手と出会ったのは県立ふれあいスポーツプラザの指導員だった17年前。中高年ばかりが参加した障害者向けの水泳教室に、一人だけ若い女の子がいた。クロールは犬かきに近く、水泳というよりは水遊び。それが奈良選手の最初の印象だった。
 「とにかく負けず嫌いで、粘り強かった」。特にセンスがあったわけではないが、教えたことは着実に飲み込んでいった。高校卒業後に障害者の国体で2種目優勝すると、目の色が変わった。練習量を増やし、気が付けば世界と戦えるタイムになっていた。
 アテネで悲願だった個人種目でのメダルを獲得した。実は「アテネでやめような」と話し合っていたが、閉会後は「まだやりたい」と指導を依頼された。「約束と違う」。苦笑したが、断る理由もなかった。
 奈良選手は「コーチが自分の可能性を引き出してくれた」と振り返る。長い年月をかけて築いた信頼が、力の源になった。
 今大会のレース後、落ち込む奈良選手から「(4年後の)ロンドンまでお願いします」と頼まれた。「またか」と驚いたが、心のどこかで予想はしていた。「本当に水泳が好きなんでしょうね」。あきれるように、笑って言った。【伊澤拓也】

9月17日朝刊

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080917-00000124-mailo-l10