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2008年09月16日(火) 00時00分

SaaS型CRMのライトナウ、最新版を発表--Web 2.0系技術を搭載読売新聞

 SaaS(Software as a Service)型顧客関係管理(CRM)システムを提供するライトナウ・テクノロジーズは9月10日、最新版となるCRMシステム「RightNow August '08」の発売を開始したことを発表した。

 同社が提供するRightNowは、現在一般的なCRMとは異なる。既存のCRMシステムは、顧客との窓口である営業部門がエンドユーザーとなる。

 RightNowの場合、実際に利用するエンドユーザーは、顧客をサポートするための部署であるカスタマーサポート、あるいはメンバーサービスなどの部門だ。より具体的に言えば、カスタマーサポートとして実際に手を動かすことになる、コールセンター/コンタクトセンターで働くオペレーターたちがRightNowのエンドユーザーになるということである。

 既存のCRMシステムでは、企業が主導する立場にあり、その第一の焦点は効率性にある。対するライトナウのCRMアプローチは、顧客が主導する立場にあり、第一の焦点となるのが顧客の忠誠心を高めることで、ビジネスの成長を促進することにある。

 ライトナウの社長であるBrian Endo氏は「お客さまを獲得するか逃すかは、たった一度の対応で決まる。実際、99%が良い経験をした企業を他人に推薦するのに対して、逆に80%は悪い経験をした企業とは取り引きをやめる、あるいは二度と取り引きをしないという調査結果が出されている」と、同社のアプローチにある背景を説明する。

 そうしたアプローチを取る同社が対象とする企業層は、企業間取引(BtoB)ではなく、最終消費者を相手とするコンシューマー向け事業を行っている企業になる。直接的・間接的に限らず、最終消費者を対象とする、企業以外の法人や行政機関なども、RightNowの想定ユーザーだ。

 RightNowの想定ユーザー業種は、通信や金融、一般消費財を販売する小売り事業者(特にウェブサイトで展開するEC事業者)、消費者=一般市民を対象とする公共機関や教育機関など、その幅は広い。また、RightNowでは、家電製品やゲーム・エンターテインメント、旅行、医療の法人をも対象にしている。

 そうした想定ユーザーを対象にしたRightNowの特徴としては、さまざまな手段を介して消費者からの“接触”(コンタクト)が増加している企業・団体が利用していると言える。具体的には、対象となる消費者の数は、千というオーダーではなく、万や数十万、億のオーダーまで対応することができる。そうした大量の消費者からのコンタクトの手段は、メールや電話、ファクスはもちろん、ウェブサイト、インスタントメッセージング(IM)技術によるチャットなどだ。

 また、RightNowを使いたいとする企業・団体が考えているのが、カスタマーサービス・サポートが非常に重要で差別化に影響を与えるということだ。より具体的には、相手となる消費者の“顔”が見えないオンラインビジネスに重点を置いている企業などがいるだろうし、顧客対応の品質に重点を置いている企業などもそうだ。また、消費者向けに大規模のコールセンター/コンタクトセンターを運営する企業も、RightNowを活用して、そのメリットを享受できるだろうとしている。

 このように一個人を顧客とし、その対象数が億単位でも対応可能とするRightNowは、時々刻々と変化するユーザー企業・団体のニーズに対応するために、3カ月ごとに新機能を追加している。最新版となる、今回のAugust '08では、(1)カスタマーポータル、(2)コブラウズ、(3)プロアクティブチャット——という主に3つの新機能を搭載している。

 (1)のカスタマーポータルでは、ユーザー企業・団体が、自社の製品やサービスに関連した情報を集約して掲載できるというものだ。具体的には、自社製品やサービスに関連した動画、オンライン百科事典にある関連情報、提供する製品やサービスについてのクチコミ情報、そのほかウェブ上での検索結果などの情報を一括して提供、いわば自社製品・サービスのポータルを提供することができるというわけである。そのイメージとしては、Googleが提供するパーソナライズドホーム「iGoogle」のように、動画からクチコミ情報などまでを揃えることができるようになる。

 (2)のコブラウズ(Co-browse)の機能は、顧客から電話やチャットで問い合わせをしているときに、顧客との了解を取ったうえで、コールセンター/コンタクトセンターのオペレーターが、顧客が利用しているPC画面を共有できるというものだ。この機能を利用することで、実際に目で情報を確認しながら、互いの認識のズレを防止、それとともにファーストコンタクトでのトラブル解決率を向上させることもできるようになる。

 また、この機能を利用することで、ウェブサイトの訪問者に過ぎなかった人間を購買に導くことも可能であり、購買行動を促進することで、売り上げに貢献できるような状況を作り出すこともできると同社では説明している。コストセンターとされがちなコールセンター/コンタクトセンターの位置付けをプロフィットセンターに変貌させるという可能性を秘めていると言えるだろう。

 (3)のプロアクティブチャットでは、一定の条件で定義された状況で、ウェブサイトを閲覧している顧客を動的にチャットに招待し、企業内部の人間とチャットできるという機能だ。一定の条件とは、たとえば一定の時間以上ウェブサイトを訪問している、あるいは、特定の数以上の検索をウェブサイト上で行っている、またあるいは、顧客のプロフィールなどの属性、などのさまざまな条件を定義することができる。ウェブサイトでのチャットでトラブルや知りたいことを解決できるようになれば、電話での問い合わせへの移行を抑えることができるなどのメリットがある。(ZDNet Japan)

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http://www.yomiuri.co.jp/net/cnet/20080916nt01.htm