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2008年09月16日(火) 22時56分

突然の流通先公表、業者など憤りの声も 事故米不正転売産経新聞

 米粉加工販売会社「三笠フーズ」(大阪市)が不正転売した汚染米の流通先377社が公表された16日、新たに明らかになった菓子メーカーや米穀販売店などでは、風評被害に対する不安が渦巻いた。公表に反対していた業者もあり、「突然公表するなんて納得できない」と、農林水産省の対応への怒りの声も上がった。

 汚染米の流通先として公表された奈良県広陵町の「小原製菓」。今年1〜8月に入荷したもち米計約24トンの中に事故米が混入していた可能性があると、仕入れ先の米穀店から連絡を受けた。おかきに加工済みだったため、8日、商品の残留農薬について検査に出し、10日には農水省奈良農政事務所の立ち入りを受けたが、メタミドホスなどの成分は検出されなかったという。

 小原勇社長(54)は「検査結果から事故米はなかったと考えている。にもかかわらず、社名が突然公表されたことは納得いかない。われわれは被害者なのに」と憤った。

 同社には、16日になって同事務所から公表方針を伝えられた。抗議したが「(方針は)変更できない」と突き返されたという。同社は同日、全国の問屋に商品の自主回収を要請した。

 和歌山市内の米穀販売店「米定商店」はこの日午前、和歌山農政事務所職員から突然、店名を公表すると告げられた。同店関係者は「国の方針なので公表は仕方ない」としながらも「うちはこれでつぶれるかも」と涙声。「保健所からの連絡が来て以来、眠れず苦しかった。事故米を口にした人には本当に申し訳ない」と苦しい胸の内を打ち明けた。

 また、滋賀県長浜市の和菓子製造「親玉商店」では今年4月、和菓子の添加物として使用するため、兵庫県内の業者で製粉されたもち米20キロを仕入れた。今月13日までに9キロを使用し、残り11キロは返品した。同店関係者は「ほかの商品にも、あやふやなものを使っていると消費者が感じて風評被害を受ける。怒りのやり場がなく、ひどい話だ」。

 公表された高齢者施設にも波紋は広がった。

 大阪府池田市の特別養護老人ホーム「伏尾荘」ではこの日朝、委託先の給食大手「日清医療食品」からの連絡で公表方針を知った。瀬戸智恵子事務長は「なるべく公表は避けてほしかった」と不満を述べながらも、「汚染米の流通が分かった段階で入所者の家族に文書で説明している。改めて混乱を呼ぶようなことはない」と話した。

 一方、同府門真市の特別養護老人施設の施設長は「今回の公表で名前が挙がった特別養護老人施設には、入居をためらうお年寄りや家族も出てくるのでは」と不安を漏らした。

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