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2008年09月16日(火) 22時57分

複雑な流通ルート、隠蔽と価格高騰の一石二鳥 事故米不正転売産経新聞

 農水省の調べでは、三笠フーズの汚染された事故米は、50もの中間流通業者を経由し、消費者に食品として届いていた。次々に転売が繰り返されるうちに、汚染米という事実は分からなくなり、価格は何十倍にもつり上がった。コメを転がす“タンブリング・ライス”で同社が得た利益は少なくとも8000万円とみられる。多くの仲介業者が介在する業界の商慣習と複雑な流通経路が“事故米ビジネス”を許し、食の安全が脅かされることになった。

 「仲介業者で転売を繰り返すのは、昔からの商慣習。コメ業界に出回る“クズ米”をみんなで転がしていれば、出所が分からなくなるし、自然に値段が上がる」。米穀業界を担当する農水省幹部は、そう事情を説明する。

 食品用の米は通常、国内の米農家から買い取ったJAを通じて、メーカーや小売店などに届く。仲介業者が介在する余地は少ない。しかし、JAの段階で「食べられるが質が悪い」と判断されるなどしたコメは、通常の流通ルートから外され、多くの米穀会社や仲介業者の取引対象となる。

 こうした米は、次々に転売が繰り返され、加工などされたうえで、消費者のもとに届く。ある業者は「そのうちに、どういう経緯で流通したコメか分からなくなる」と実情を明かす。

 「“やばい米”となんとなく分かっていても、みんなで転売を繰り返せば、責任逃れができる。われわれの検査も途中で止まると思っている。商慣習ができた背景には、業界のこうした集団心理があると思う」と農水省幹部は指摘する。

 不正転売では、「工業用」とは知らされずに悪意なく転売していた仲介業者が多く、その意味では被害者とも言える。しかし、悪意の有無はともかく、“タンブリング・ライス”のうち、消費者・需要者に届いた段階で政府の仕入れ値のうち40倍もの価格となったケースもあったという。

 三笠側が、こうした商慣習を逆手にとって、不正の隠蔽(いんぺい)工作を行っていたのも事実。農薬メタミドホスで汚染された同社の中国米418トンは、佐賀県の「マルモ商事」などを通じて転売されたが、この仲介取引は伝票上だけ。冬木三男社長は今月14日に公表した釈明文で「(同社の利益は)架空計上した」と認めた。

 三笠側は、この手法で1トン5000円程度で購入した汚染米を、食用と偽って90000円程度で転売。約3000万円程度の不正利益を得たとみられる。アセタミプリドの汚染米では、同様に1キロにつき82円の差益を得ており、598トンで4900万円に上る。

 不正利益は現在判明しているだけで8000万円近い計算になるが、さらに拡大が予想される。

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